厚生労働省は、事業主にパワーハラスメント防止措置の実施を義務付けた労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)の施行状況を明らかにした。
義務化の対象を中小企業まで広げた令和4年度において、労働者や事業主から都道府県労働局に寄せられた同法関連の相談は5万840件で、前年度から倍増した。
雇用管理の実態把握を行った事業所のうち、2258事業所で同法違反がみつかり、是正指導を実施した。相談窓口の設置などパワハラ防止措置に関する指導が1655件に上る。
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役割・職責は職務関連手当で――えびの電子工業
大手メーカーの協力企業として電子部品を製造するえびの電子工業㈱(宮崎県えびの市、津曲慎哉代表取締役社長)では、賃金は査定昇給を行う基本給をベースにしつつ、複数の職務関連手当を支給している。
特定の専門作業担当者向けの職種手当や担当業務における技能レベルに応じた技能手当を設けることで、役割や職責の違いを処遇に反映している。
高い職責・役割を担うには、業務管理能力の発揮度をみる「職制成長チェック」の評価を上げる必要がある。
一方で基本給に関しては、職務遂行能力などを全社員同一項目で評価し、評価ランクに応じて昇給額が決まる。
転居の可否を毎年選択制へ――あいおいニッセイ同和損保
あいおいニッセイ同和損害保険㈱(東京都渋谷区、新納啓介代表取締役社長)は、10月に人事制度を改定する。勤務地の範囲で3つに分けていた社員区分を一本化し、育児などのライフイベントがなければ採用時の区分から転換できなかった点を見直す。
今後は転居転勤の可否については、個人が毎年選択できる仕組みとし、手当の有無で処遇に差を付ける。
併せて非管理職層の資格区分を計6階層から4階層まで減らし、最低滞留年数を全廃して20歳代での管理職登用を可能にする。
新事業創出に必要な人材の確保をめざして、個別に職務を限定する専門職区分も創設する。
第302話「副業者6割勤め先に届け出ず」
JILPT(労働政策研究・研修機構)は副業者の就労に関する調査を行った。
18~64歳の就業者159万8770人を対象に行い、18万8980人から有効回答を得た。
仕事を2つ以上持っている副業者は全体の6.0%で、本業の就業形態は非正社員が41.0%で最も高く、次いで正社員が38.1%だった。
本業の勤め先で副業が禁止されているか尋ねたところ、11.0%が「禁止されている」、73.6%が「わからない」と回答した。
勤め先に副業していることを「知らせている」としたのは38.7%、「正式な届出などはしていないが上司や同僚は知っている」が23.8%で、あわせて6割が勤め先に届け出ていなかった。
「知らせいない」割合は正社員43.5%で非正社員31.9%より高かった。
以上
精神障害 請求・支給決定が過去最多――厚労省・過労死等労災補償状況
厚生労働省が取りまとめた令和4年度の「過労死等の労災補償状況」で、精神障害に関する労災請求件数と支給決定件数が前年度に続き過去最多を更新したことが分かった。
請求件数は前年度よりも300件以上多い2683件となり、支給決定件数は80件以上増えて710件に達した。
業種別では、請求・支給決定ともに医療・福祉、製造業、卸売業・小売業の順に多かった。
心理的な負荷を与えた出来事では、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が最も多い。
退職金全額不支給は有効――最高裁
宮城県の公立学校で教員を務めていた労働者が、懲戒免職処分による退職金の全額不支給を不服として訴えた裁判で、最高裁判所第三小法廷(長嶺安政裁判長)は不支給処分を有効と判断した。
審査に当たっては、処分が裁量権の行使としてされたことを前提としたうえで、社会観念上著しく妥当性を欠き裁量権の逸脱・濫用といえる場合に違法とすべきと強調している。
労働者は公立校の教員の立場にありながら、飲酒運転という犯罪行為に及んでおり、約30年間誠実に勤務し、反省の情を示している点を踏まえても、裁量権の逸脱・濫用はないとした。
正社員男性 ピーク時は43.1万円――厚労省 雇用形態別賃金
令和4年賃金構造基本統計調査の雇用形態別集計によると、男性フルタイム労働者の所定内給与のピークは正社員が55~59歳の43.1万円、非正社員は再雇用世代である60~64歳の28.4万円だった。
ピーク時の水準を比較すると、正社員は非正社員の1.52倍となっている。
短時間労働者・非正社員の女性の1時間当たり賃金は、経験年数0年の1194円に対し、1~2年1228円、3~4年は1247円で、0年と3~4年は53円しか開いていない。
第301話「管理ではなく、遊びの場づくりを」
日本企業は社内で人材を育成してきた。
今のリスキリングとは何が違うのか。
実践共同体やキャリア開発に詳しい法政大学大学院政策創造研究科教授の石山恒貴氏によると「VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代に企業は、短期に変化に応じて、必要なスキルの社内蓄積を目指す。
そのために企業が学び直しを進めるのがリスキリング。
一方、リカレント教育(社会人の学び直し)は個人が主語。
企業がリスキリングですぐに成果を出そうとすると、社員はやらされ感を持つ」「リスキリングを個人の行動と組み合わせれば、社員に自律性が生まれ、実践共同体が有効になる。
社員は専門性が高まると、互いに刺激し合い、学び合っていく。
企業は実践共同体に関与しすぎてはいけない。
成果を求めて管理しようとすると、結局うまくいかない。
かつて日本企業のQCサ-クルと呼ぶ小集団活動が機能したのも社員の自主性を生かしたから」「ジョブ型を導入すれば上手くいくという考え方は単純。
ジョブ型には『テ-ラ-の科学的管理法』の管理重視・創造性軽視の短所があり、欧米企業はその点の修正を進めている。
企業は場づくりをしても、社員の学びの主体性を口に出さないこと。
一見、経営に無駄に思えても、実は遊びこそが大事。
管理ではなく、遊びの場づくりに徹したい。
社員を信じる力が問われる」と指摘している。
以上
男性育休 長期の取得促進へ奨励金――福井県
福井県は、男性が長期の育児休業を取得しやすい環境を整備する企業を後押しするため、新たな奨励金制度を設ける。
育休中の男性従業員の代替人員として、派遣社員を活用したり新しく従業員を雇用したときに、15日当たり13万円を支給する。
部下を持つ上司が育休を取得した場合は支給額を16万円に引き上げ、上限を1社当たり384万円とした。
同僚への応援手当や育休取得者への手当創設を促す奨励金も設け、それぞれ最大支給額は120万円。
90日以上の育休を取得した場合にも50万円を交付する。すべての支援メニューを合わせ、1社当たり最大674万円を支給する。
管理職へ11段階ポスト給――伊予銀行
㈱伊予銀行(愛媛県松山市、三好賢治頭取)は昨年10月に人事制度を改定し、役割グレード別に昇降給を行う「役割給」をベースとしたうえで、管理職層に限ってはポジション別定額の「ポスト給」を新設した。
支店長や部課長のポストを計11段階のポストグレード(PG)に格付け、PG1とPG11の間で2倍強の差を付けている。
支店長については店格に応じて、PG4~11の8段階に格付けた。役割給とポスト給のおおよその比率は、本部のアドバイザーで1対1、旗艦店の支店長で1対2となっている。
非正規向け公的訓練 柔軟な日程・手法を検討――厚労省
非正規労働者のキャリアアップをめざし、柔軟な日程・手法による職業訓練に――厚生労働省は「公的職業訓練のあり方に関する研究会」(座長・今野浩一郎学習院大学名誉教授)を設置し、在職者に対する公的職業訓練の強化に向けた検討を進めている。
6月27日の第2回会合で、「働きながらでも学びやすい職業訓練」の制度設計に向けた論点を提示。
勤務曜日・時間が多様なシフト制労働者などに配慮し、通所日の設定の柔軟化のほか、オンライン訓練、オンデマンド型eラーニングの活用を提案した。
第300話「業務の見直し必要」
働く人のリフレッシュや学び直しの時間の確保、子育てや介護との両立などに有効として、「週休3日制」が注目されている。
2022年厚生労働省の調査では、「完全週休2日制」の企業で働く人が全体の60%なのに対し、週休3日制を含め、それより多い人も10%を占めるまでになった。
高齢者の入居施設などは土日も休みではなく、夜勤もあり職員の負担が大きくなりやすい。
介護現場への週休3日制導入は、「2日続けて休みを取りやすくなるなど、職員の負担軽減に有効で、人手不足が深刻な介護業界にマッチしている」との見方がある一方、夜勤時間の短縮や、日勤職員との引継ぎなど新しい働き方への切り替えには業務の見直しと、それぞれの現場の実情に応じた制度設計が必要となる。
以上