定昇分含め6%程度要求へ――UAゼンセン闘争方針案

繊維・流通・サービスなどの産業で働く185万人が加盟するUAゼンセン(松浦昭彦会長)は、賃金体系維持分に加えて4%程度、合計で6%程度の賃金引上げを求めるとする労働条件闘争方針案をまとめた。連合が掲げた賃上げ分3%程度との方針を踏まえ、格差是正に向けてさらに1%程度の上積みをめざす。全体の6割を占める短時間組合員にも同様の基準を示し、総額では時間当たり50円増を目安として上積みを求めるとした。今年10月から社会保険適用拡大にかかる企業規模要件が100人超に引き下げられていることを受け、キャリアアップ助成金の活用などを促し、適用拡大に取り組むともしている。

社労士版「人権方針」を策定――全国社労士会

全国社会保険労務士会連合会(大野実会長)は、社労士の事業活動全般を対象とし、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた「人権方針」を策定した。重点的な取組み事項として、労働関連法令の遵守など10項目を掲げている。まずは会員社労士に国際的な基準や考え方を浸透させ、中小企業にも助言できる専門性を養う。すでにeラーニングを用いた研修に取り組んでおり、来年1~2月には集合研修型のケーススタディーも行う。社労士が人権を侵害した場合を想定し、通報できる窓口も設置している。

保険販売員の懲戒解雇無効――札幌地裁

日本郵便㈱でかんぽ生命の保険販売員として働いていた労働者が、不適切販売問題に関連して懲戒解雇処分になったのを不服とした裁判で、札幌地方裁判所(中野琢郎裁判長)は処分を無効と判断した。労働者は1人の顧客の17件・月額89万円の既契約を解約させ、新たに19件・月額120万円の契約を締結させる、いわゆる「乗換契約」で処分を受けた。同地裁は、労働者が顧客に不利益を十分説明していたと指摘。契約は意向に沿ったもので、処分事由は存在しないとした。同社はかんぽ生命の不適切販売をめぐって、これまで計28人を懲戒解雇にしている。

第282話「学び直し、教養や収入のため」

ベネッセコ-ポレ-シヨンが学生を除く18歳から64歳の男女3万5500人を対象に「社会人の学びに関する意識調査」をしたところ、学習意欲がある社会人の割合は47%だった。
調査では社会人になってからの学習意欲と学習の有無を調べ、4つに分類した。
「学習意欲なし層」は回答者の41.3%、「学習し続けている層」は33.6%と多かったが、「これから学習したい層」も13.5%おり、唯一女性の割合が半数を超えた。
この層はパ-トやアルバイト、専業主婦が他の層よりやや多く、学習目的は「趣味・教養のため」「収入アップのため」のほか「副業・副収入を得るため」も上位だった。

同社では仕事やキャリアに直結しづらい社会構造があると分析している。
また、リスキリング(学び直し)への注目が高まり、国は重点政策に位置付けており、企業などは学習の必要性を認識して意欲を高めるよう促し、スキル習得ができる環境をつくる必要があると指摘している。

以上

時間外違反率15%に低下――東京労働局・3年監督結果

東京労働局(辻田博局長)管内の18労働基準監督署が令和3年1年間に実施した定期監督結果によると、監督した1万130事業場のうち、違法な時間外労働が認められた割合は15%(1521事業場)で、20%を超える例年の傾向を下回った。同労働局は、新型コロナウイルスで仕事が減少した影響があるとみている。令和2~3年は監督実施数が1万件程度に留まっていたが、今年はウィズコロナ体制としてコロナ禍前の水準まで引き上げ、来年度以降も取締りを強化していくとしている。

労災支給取消し訴訟 特定事業主の原告適格認める――東京高裁

一般財団法人あんしん財団が職員に対する労災支給処分の取消しを求めた裁判で、東京高等裁判所(鹿子木康裁判長)は同法人の原告適格を認め、審理を東京地方裁判所に差し戻した。メリット制の適用がある特定事業主は、労災支給処分によって当然にメリット収支率が上がり、次々年度以降の保険料が増額される可能性があると指摘。直接具体的な不利益を被るおそれがあり、処分取消しを求める適格性があると判断した。一方、労働保険料の認定処分については、保険料額認定に至るまで訴訟で争えないのは合理的ではないとして、原告適格を認めなかった。

解雇無効時の金銭救済制度 導入是非で労使対立――労働政策審議会分科会

解雇無効時の金銭救済制度の導入の是非を巡り、労働政策審議会労働条件分科会で労使の主張が対立している。使用者側が「紛争解決に向けて労働者の選択肢を増やす制度」、「解決金額の予見可能性が高まる」として導入を訴えているのに対し、労働者側は、企業による訴訟外での示談強要が頻発する可能性を指摘しつつ、「労働審判など現行制度で十分。新たな制度で救済される労働者は全くいない」と反発。見解に隔たりが大きく、公益側からは、救済が想定される労働者の実態把握を厚生労働省に求める声が上がった。

第281話「有配偶者パ-ト女性の6割が時間調整」

野村総合研究所が20~69歳でパ-トとして働く配偶者がいる女性3090人を対象にインタ-ネットで調査したところ、61.9%が働く時間を調整していることがわかった。
就業調整をしている人に年収の壁がなくなったら今より働きたいかと聞いたところ、36.8%が「とてもそう思う」、42.1%が「まあ、そう思う」と答えた。

扶養されている人は年収が103万円を超えると配偶者控除がうけられなくなる。
会社の規模によるが、年収106万円または年収130万円になると社会保険料を負担する必要もある。

政府は10月最低賃金を引き上げたが、時給が上がっても就業調整するため所得増につながらない家庭もあり、共働き世帯の増加など時代の変化に対応した制度づくりを急ぐべきとしている。

以上

定昇込み5%で正式決定――連合

連合は12月1日、千葉県内で中央委員会を開き、2023春闘方針を正式に決定した。賃金要求指標に関しては10月に示していた基本構想どおりとなり、ベア3%程度、定期昇給分込みで5%程度を求める。議案提起に先立って挨拶した芳野友子会長は、リスキリングによって賃金の高い企業への労働移動を促す政策に対し、「企業として賃上げの必要がなくなる可能性がある」と懸念を示した。持続的な成長と分配の好循環を達成するためには、「短期・中長期にわたる賃上げが不可欠」と改めて訴えている。

ウーバーイーツ 配達員の労働者性認める――都労委

東京都労働委員会(金井康雄会長)は、UberEatsJapan合同会社とサービスの利用契約を結ぶ配達パートナーの労働者性を認め、配達パートナー30人で構成するウーバーイーツユニオンからの団体交渉に応じなかったとして、同社の不当労働行為を認定した。一定の禁止行為を規定したり、違反した場合にはアカウントを停止するなど配達員を強く統制し、事業に不可欠な労働力として組織に組み入れていたと判断している。同社が登録手続きなどの業務を委託していたUberJapan㈱についても、同様に団交に応じるよう命令した。

定年後の再雇用拒否は有効――東京高裁

NHKのコールセンターで働いていた労働者が、定年後に再雇用されなかったことなどを不服とした裁判で、東京高等裁判所(岩井伸晃裁判長)は再雇用拒否を有効と認めた一審判決を維持した。労働者には就業規則所定の解雇事由があり、人事評価も極めて低かったと指摘。改善指導にも従う姿勢がなく、再雇用しない客観的・合理的な理由があったとした。同センターでは、ハラスメント電話があった際、上司に転送するルールとなっていたが、労働者はルールを守らず、視聴者との間で口論となるトラブルを複数回起こしていた。

100人以上の改定額 840円増の5530円――賃金引上げ等の実態調査

令和4年の賃金改定額はコロナ禍前と同水準の5534円に回復――。厚生労働省の「賃金引上げ等実態調査」によると、規模100人以上の1人平均賃金改定額は前年を840円上回り、率では0.3ポイント増の1.9%だった。規模別では5000人以上の6478円(1276円増)に対し、100~299人は4738円(626円増)に留まっている。定昇制度を持つ企業におけるベア実施率は、一般職29.9%(12.2ポイント増)、管理職24.6%(9.5ポイント増)だった。

事業場外みなし 製薬会社MRに適用認めず――東京高裁

外資系製薬会社で外勤の医療情報担当者(MR)として働いていた労働者が、残業代などの支払いを求めた裁判で、東京高等裁判所(村上正敏裁判長)は事業場外みなし労働時間制の適用を認めない判決を下した。勤怠管理システムの導入後は直行直帰が基本のMRについても、始業・終業時刻の把握が可能になったと指摘。労働時間を算定し難いときに当たるとはいえないとした。一審の東京地方裁判所は、具体的な訪問先やスケジュールは労働者の裁量に委ねられており、上司の指示・決定もなかったとして、事業場外みなし制の適用を認めていた。

同一賃金 労基署が事実関係確認へ――厚労省

厚生労働省は、非正規雇用労働者の待遇改善に向け、パート・有期雇用労働法に基づく報告徴収を行う都道府県労働局の雇用環境・均等部門と、労働基準監督署の連携を強化する。新たに、労基署が定期監督などを利用して非正規雇用労働者の基本給や諸手当などの処遇について事実確認を実施し、労働局における報告徴収の対象企業の選定に活かしていく。同法に基づく是正指導の実効性の強化を狙う。同一労働同一賃金の遵守に向けた取組みを徹底するため、労働基準監督官を全国計で52人増員する方針だ。

第280話「男性育休の転職への影響」

男性育休の環境整備が転職先選びの重要な判断材料になりつつある。
パ-ソナルキャリアが、将来の子育てを希望し、転職に関心のある20~30代の男性200人と、企業の人事担当者200人を対象に調査したところ、双方で7割超が「育休取得実施率の高さは転職時の応募動機に影響する」と回答した。
転職市場における男性育休への関心の高まりは、転職サ-ビス「doda」の求人件数の大幅増の推移からも読み取ることもできる。

今後企業が優秀な人材を確保するためには、「男性育休の意向を含めた転職者のライフプランを知り、主体的なキャリア形成を後押しする視点が欠かせない」との指摘がある。
また、同調査では「今の会社で育休を取得しやすい」との回答は個人・企業共に57.7%だった。

個人の取得意向(90%)とのギャップはまだまだあるが、男性育休を促進する法改正を機に企業の環境整備が進みつつある「明るい兆し」と言える。

以上