連合は10月20日、来年の春季労使交渉の賃上げ要求に関し、ベースアップに相当する賃上げ分として3%程度、定期昇給相当分を含めて5%程度とする「基本構想」を確認した。過去7年間にわたり定昇込みで4%程度の方針としてきたが、物価上昇などを踏まえて28年ぶりに5%という数字を掲げる。賃金実態が把握できない中小組合などに対しては、賃上げ分として9000円、総額では1万3500円を目安に求めるとしている。
月別アーカイブ: 2022年10月
産業医勧告 不利益取扱い禁止は努力義務――東京高裁
産業医事務所が、労働安全衛生法に基づく勧告権行使を理由に顧客企業から契約を解除されたと訴えた裁判で、東京高等裁判所(石井浩裁判長)は同事務所の請求を棄却した。勧告権行使を理由とする不利益取扱いを禁止した安衛則の規定は「努力義務」と判示。委嘱契約は準委任に当たり、原則双方がいつでも契約解除できるが、安衛法が労働者の健康確保のために産業医に職務権限を与えていることを考慮し、契約解除が法の趣旨を実質的に失わせている場合は権利濫用に該当するとした。本事案では勧告後、産業医側が労働基準監督署の行政指導を示唆するなど、自ら対決姿勢を深めていったと指摘。信頼関係の破壊を認め、契約解除は有効と判断している。
産業保健活動 業務外疾病への対応課題に――厚労省
厚生労働省は、企業を取り巻く環境変化や中小企業での産業保健活動の低調さなどを踏まえ、効果的に活動を推進するための方策について検討を開始した。テレワークの拡大や女性の就業率上昇、高年齢労働者の増加に伴う健康問題への対応など、抱える課題の多様化を背景に、有識者検討会において産業保健のあり方について議論を重ねる。治療と仕事の両立支援など、業務と直接関係のない問題への対応をどのように位置付けるべきかなどが論点になる。産業医や衛生管理者が担うべき役割、選任義務のある事業場の範囲、中小企業への支援方策についても検討を進める。
第277話「経営者、オフィスの重要性実感」
新型コロナウイルス禍でリモ-トワ-クや在宅勤務が広がったが、オフィスの重要性を認識している経営者も多く、コミュニケ-ション不足や人事評価のしづらさなどの問題を実感する声が多い。
調査会社のネオマ-ケティングが、従業員300人未満で資本金3億円未満の賃貸オフィスビルに入居する全国のスタ-トアップや中小企業の経営者を対象に調べ、1,000件の有効回答を得た。
コロナ禍の2019年12月以降実感したことでは、オフィスビルの重要性を「実感した」「やや実感した」との回答が計46.7%に上った。
「リアルなコミュニケ-ション」では同74%、「リアルな会議」が61.1%とともに半数以上が重要性を実感している。
オフィスビルで働く上でのメリットを聞き取ると「気軽にコミュニケ-ションが取れる」が65.8%と最も多く、次に「業務に集中しやすい」が47.8%、「働くための環境が整っている」が45.5%と続いた。
新型コロナの感染拡大が収束した後にリモ-トワ-クの頻度がどう変わるかについては、「増加すると思う」「やや増加すると思う」との回答が計27.8%、一方で「減少すると思う」「やや減少すると思う」との回答は計32.9%と、減少すると思う方が上回った。
以上
10団体が最低年収目安策定――建専連
専門工事業者の団体らで構成する建設産業専門団体連合会(=建専連、岩田正吾会長)は、会員10団体が策定した「技能レベルごとの最低年収目安」を公表した。国土交通省が普及を進める建設キャリアアップシステム(CCUS)に則り、東京都内で勤務する場合の水準を示している。たとえば基礎ぐい工事技能者のケースでは、初任給相当で356万円以上、一人前レベルで403万円以上、職長レベルで576万円以上などとしている。人材確保に向けてキャリアパスを明示するとともに、仕事の繁閑で上下しがちな請負価格の適正化を図る材料にするのが狙い。
月253時間残業させ送検――岡山労基署
岡山労働基準監督署(小松原邦正署長)は、36協定の締結・届出なく労働者6人に違法な時間外労働をさせたとして、食料品製造業の㈱山陽フードサービス(岡山県倉敷市)と同社代表取締役を労働基準法第32条(労働時間)違反の疑いで岡山地検に書類送検した。同社は今年4月に、最も長い者で月253時間の時間外労働をさせた疑い。5月に同労基署が臨検した際、労働時間数を過少に記載した虚偽の勤務報告書を提出した疑いも持たれている。
家政婦 死亡を労災認定せず――東京地裁
家政婦紹介業を営む会社に家政婦兼訪問介護ヘルパーとして登録して働いていた労働者の遺族が、7日間の住み込み勤務後に死亡したのは会社の業務が原因と訴えた裁判で、東京地方裁判所(片野正樹裁判長)は労災と認めない判決を下した。勤務のうち、家事業務については雇用主が個人宅であり、労働基準法第116条2項で同法の適用が除外される「家事使用人」に当たると指摘。会社の指揮命令下で従事した介護業務は、週31時間30分に留まり、業務起因性を認めるのは困難とした。
平均年間給与 正社員・男性570万円に――国税庁 令和3年民間給与実態
国税庁の令和3年民間給与実態統計によると、昨年1年間を通じて勤務した正社員の平均年間給与は、男性が569.9万円、女性が388.9万円だった。前年結果と比べて、それぞれ3.6%増、1.4%増と伸びている。役員も含めた全体の平均給与は、男女計が443.3万円(2.4%増)で、男性は2.5%増の545.3万円、女性は3.2%増の302.0万円だった。業種別では情報通信業が624万円、製造業が516万円となり、425万円の運輸業,郵便業を除く全業種で前年結果を上回った。
偽装一人親方把握へ実態調査――国交省
国土交通省は、技能者を一人親方として装う「偽装一人親方」対策として、建設業者を対象に実態把握に乗り出す。毎年11月に社会保険の加入状況や賃金実態などを調査するのに当たり、契約する一人親方の働き方が適正かどうかを確認する「働き方自己診断チェックリスト」の活用状況を調べる。来年度はさらに一人親方の実態把握に向けた調査も実施する予定で、ガイドラインで示す「適正な一人親方の目安」である必要な実務経験年数10年以上などの基準について、改定の必要性を検討する。
精神不調 認識可能性認め降格無効に――東京高裁
上司への誹謗中傷などを理由とする降格処分の有効性が争点となった裁判で、東京高等裁判所(髙橋譲裁判長)は処分を無効とする判決を下した。裁判は物流アウトソーシングなどを営む会社で働く労働者が起こしたもので、同高裁は、会社は労働者の精神疾患発症を認識するのは難しかったとしても、心身の異常やその原因は処分時に認識可能だったと指摘。降格は懲戒権濫用に当たると判断した。労働者は上司との関係悪化や業務過多を再三訴えていたが、会社は改善措置を講じなかった。処分後、労働者は精神疾患で5カ月休職。この疾患は「上司とのトラブル」などが理由として裁判中に労災認定を受けた。労災認定における疾患発症日は処分前で、処分事由となった労働者の行為はいずれも発症日以降のものだった。
第276話「若手の転職希望者、職場見学を希望」
就職情報サ-ビスの学情は既卒や若手社会人の就職活動の考え方について調査した。
就職活動での選考過程で求める機会を複数回答可の形式で聞いたところ、就業経験3年以上の「ヤングキャリア」では「職場見学」が54.6%と最も多かった。
一方、就業経験のない「既卒」では「カジュアルな面談」が54.7%で最多だった。
同じ20代でも、就業経験によって求める機会が異なることがわかった。
同調査は20代専門転職サイトの訪問者へインタ-ネット上で行い、有効回答数は576件だった。
調査結果はヤングキャリアと就業経験3年未満の第二新卒、既卒に分けて集計した。
以上
労災認定 暑熱を負荷要因と評価――京都下労基署
京都下労働基準監督署(田中淳史署長)が、急性心不全で死亡した自動車整備士に関し、労働時間以外に「暑熱環境」を負荷要因と認め、労災認定していたことが分かった。整備士の発症前2~6カ月の月平均時間外労働は最大77時間21分で、過労死ラインには達していない。同労基署は平成28年11月に整備士の遺族に対し、労災補償の遺族補償給付と葬祭料を不支給処分としており、これを不服とした遺族が行政訴訟を起こしていた。昨年の改正で労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価することを明確化した脳・心臓疾患の労災認定基準を踏まえて処分を取り消し、認定した。
パワハラ 職場環境は理由ならず――最高裁
パワーハラスメントを理由とする分限免職の有効性が争点となった裁判で、最高裁判所第三小法廷(林道晴裁判長)は処分を違法とした二審判決を取り消し、免職を有効と判断した。裁判は山口県長門市で消防士として働いていた労働者が処分を不服としたもので、二審の広島高等裁判所は消防組織という独特な職場環境や、パワハラ研修を受けさせていない点を考慮し、免職は重過ぎるとしていた。最高裁は、パワハラは5年を超えて繰り返され、職員全体の半数近くが被害に遭うなど、職場環境の悪化は公務の能率の観点からも見過ごせないと指摘。分限免職を適法と判示した。
デジタル払い 口座残高上限100万円に――厚労省
厚生労働省は、賃金のデジタル払い(資金移動業者の口座への賃金支払い)を可能とする労働基準法施行規則の改正省令案を明らかにした。使用者が労働者の同意を得た場合、一定の要件を満たして厚労大臣の指定を受けた移動業者の口座への資金移動によって賃金を支払えるようになる。指定要件には、口座残高上限額を100万円以下とすることや、ATMを利用して1円単位で通貨を受け取れることなどを盛り込む。企業には、賃金支払い方法の選択肢として、銀行口座や証券総合口座への振込みなども労働者に示すよう義務付ける。公布は今年11月、施行は来年4月1日の予定。
第275話「後継者難の倒産 過去最多」
後継者がいないため倒産や廃業をする企業が都内で増えている。
新型コロナウイルス禍に伴う行政の資金繰り支援策で企業倒産件数は低水準に抑えられているが、後継者難による倒産は2021年度に過去最多を更新した。
東京商工リサ-チの調査では、2021年度の後継者難による都内の倒産件数(負債額1千万円以上)は86件だった。
中小・零細企業が中心で、統計を取り始めた2013年度に比べ倍増した。
特に2021年度は前年比で40.9%増え、増加ペ-スが大幅に加速した。
同社によると、新規出店の減少に伴い需要が縮小した建築内装関連が目立つ。
要因別では、代表者の死亡と体調不良が約8割を占めた。
経営者の高齢化は深刻さが増す。
中小企業白書によると最も多い経営者年齢層は2000年は50~54歳だったのに、2015年は65~69歳となった。
2020年も70歳以上の経営者の割合は高まった。
廃業する企業数が高水準で推移しているのは、経済の規模が拡大し続けてきた東京では、事業承継を考えていなかった経営者が地方より多かったことも要因している。
以上