大手企業の賃金実態を調べている中央労働委員会の「賃金事情調査」によると、大学卒の事務・技術(男性)の実在者平均所定内賃金は、22歳で22.2万円、35歳で39.0万円、45歳で49.9万円などとなり、ピークの55歳では56.6万円だった。全体的に前年比プラスの傾向を示したものの、35歳では0.2%減、40歳では1.2%減と落ち込んでいる。役付手当の平均支給額は、定額制の場合で部長級が7.7万円、課長級が4.7万円、係長級が2.4万円となり、5年前の前回調査と比べて1~3割アップしている。
月別アーカイブ: 2022年5月
リスキル推進に報酬提示を――経産省
経済産業省は、人的資本経営の実現に向けた検討会の報告書を取りまとめ、経営環境の急速な変化に対応するための人材戦略の1つとして、リスキル・学び直しの推進を掲げた。現在の職務にかかわらず機会を提供するため、労働時間の一定割合をリスキルに活用できる制度を導入するなどとしたほか、挑戦を促すうえではリスキル後に期待される報酬水準や処遇、ポジションを示すことが重要と提言している。
都の時短命令は違法――東京地裁
飲食業を営む㈱グローバルダイニング(東京都港区、長谷川耕造代表取締役社長)が、東京都による令和3年3月18日付けの時短営業命令を不服として訴えた裁判で、東京地方裁判所(松田典浩裁判長)は命令を違法と判断した。命令は緊急事態宣言解除までを対象としており、効力が生じる期間は4日間しかなかったことが確定していたと指摘。それにもかかわらず、あえて発出する必要性を合理的に説明できていないと強調している。一方、同社が求めた104円の損害賠償については、都知事に過失があるとまではいえないとして、請求を棄却した。
繁忙期に月180時間残業――小諸労基署
長野・小諸労働基準監督署(末永信二署長)は、労働者2人に対し、時間外労働の上限規制を超えて働かせたとして、フランス料理店を営む㈲Ryobi(長野県軽井沢町)と同社代表者を労働基準法第36条(時間外および休日労働の上限規制)違反の疑いで長野地検佐久支部に書類送検した。同社は繁忙期の1カ月間に最長で180時間の時間外・休日労働をさせることで、月100時間の上限を超過した疑い。1日の時間外労働についても、36協定で定めた上限7時間を超えていた疑いが持たれている。
同一労働同一賃金 4割強で待遇差是正推進へ――東京都調査
東京都が都内3000社に実施したパートタイマーに関する実態調査によると、正社員との不合理な待遇差をなくすための取組みを実施済み、もしくは実施を予定している企業の割合が4割強に上った。そのうち、職務評価などを通じて根拠の明確化のみで対応するとした割合は18%に留まり、77%がパートの待遇に対して何らかの改善に取り組んでいる。改善内容別の取組み割合は、休暇制度の見直し45%、基本給の引上げ・変更36%、賞与の支給対象拡大30%などとなっている。
留学費用 賃金と相殺は有効――東京地裁
大成建設㈱で働いていた労働者が留学費用と相殺された賃金の支払いを求めた裁判で、東京地方裁判所(和田山弘剛裁判官)は相殺を有効と認め、相殺後の残金730万円の返還を労働者に命じた。労働者は同社の社外研修制度で海外の大学に留学したが、復職後1カ月も経たないうちに自己都合退職した。両者は復職後5年以内に自己都合退職した場合は留学費用を返還し、賃金との相殺についても異議を申し立てないとする誓約書を交わしていた。同地裁は、労働者は自由意思で相殺に合意したと指摘。労働基準法が定める全額払い違反はなく、相殺は有効と判断した。
人事評価整備で企業成長へ――中小企業白書
中小企業庁は、2022年度版の中小企業白書を取りまとめ、人事評価制度を導入する重要性を強調した。企業規模21~50人の企業では現状、導入率が6割弱に留まる点などを指摘。従業員の能力開発につながるほか、制度のある企業の方が、ない企業より売上高増加率が4ポイント高いとのデータを示した。環境変化に合わせた制度の見直しも求められるとし、頻繁に見直しを行う企業ほど売上高増加率が高い傾向にあるとしている。
ポスト消滅による解雇有効――東京地裁
クレディ・スイス証券㈱(東京都港区、桑原良代表取締役社長兼CEO)で働いていた労働者が部署・ポスト消滅による解雇を不服として訴えた裁判で、東京地方裁判所(佐藤卓裁判官)は解雇を有効と判断した。同社は部署廃止後に計5つの社内公募を提示しており、解雇回避努力を尽くしたと評価している。労働者は社内公募ではなく任用の保証があるポジションを提示すべきと主張したが、同地裁は「社内公募という人事制度を採用している同社に対し、特別な措置を求めるに等しい」と認めなかった。判断枠組みはいわゆる整理解雇の4要素を用いている。
ホワイトカラー 能力診断ツールを開発――厚労省
厚生労働省は、40~60歳代のミドルシニア層のホワイトカラー職種向けに職業能力を診断できる「ポータブルスキル見える化ツール」を開発し、職業情報提供サイト「jobtag」内で公開した。「現状の把握」や「計画の立案」といった自身のスキルを15分程度で入力すると、本人の持ち味を生かせる職務や職位が示される仕組みで、労働者のキャリアの形成・転換に生かすことができる。キャリアコンサルタントなどの支援者が、企業内の労働者のキャリア自律と自己啓発を促すための相談や、求職者の職業相談の場面で活用することなどを想定している。
第266話「最低賃金引上げの影響」
日本商工会議所と東京商工会議所が中小企業6000社に実施した最低賃金引き上げの
影響に関する調査結果によると、今年の引き上げ額が30円となった場合、「経営に影
響がある」と回答した企業が65.7%にのぼった。
仮に30円引き上げられた際にとる対応策としては、「設備投資の抑制など人件費以外
のコスト削減」が45.9%で最も多かった。
一方、「正社員の残業代の削減」は37.7%、「一時金、福利厚生費の削減は」31.4%、
「非正規社員の残業時間、シフトの削減」は30.3%と、労務面での対応を挙げた企業
も少なくなかった。
政府は2016年に、「最低賃金の全国加重平均額を1000円になることをめざす」方針
を示している。引上げが1円だった20年を除き、16年から毎年3%台(25~28円)の
大幅な引き上げが行われていることに対し、「現在の最低賃金額が負担になっている」
と回答した企業は65.4%あった。
以上