人事システムの販売などを営む㈱シーエーシーで働いていた労働者が降格を不服とした裁判で、東京地方裁判所(上村考由裁判官)は降格を違法・無効と判断し、慰謝料30万円を含む計220万円の支払いを命じた。同社は平成28年1~2月にかけ、労働者を2度降格処分とし、役職手当を減額した。同地裁は労働者の能力不足を示す証拠はないと指摘。降格と手当減額は人事権濫用に当たり無効とした。2度目の降格については、判断する期間が短すぎるとして、不法行為に該当すると評価している。
月別アーカイブ: 2021年9月
最賃引上げ対応 取引公正化へ行動計画――公取委
公正取引委員会は、今年10月の地域別最低賃金の引上げによって中小企業に不当なしわ寄せが及ばないようにするため、相談対応の強化などを柱とした「中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」をまとめた。下請企業向けの相談窓口を全国9カ所に設置するほか、オンラインによる相談会も実施する。最低賃金改定に伴うQ&Aを新たに作成し、最賃改定で労務費コストが上昇した下請事業者からの単価引上げ要請に、一方的に従来どおりの単価で発注することが下請法で禁止されている「買いたたき」に該当する恐れがある点を発注者側へ周知する。
カスハラ防止へ企業研修――厚労省・4年度
厚生労働省は、令和4年度にカスタマーハラスメント対策に着手する方針である。顧客や取引先企業雇用者などからの著しい迷惑行為に対処するため、企業向け対策マニュアルを作成し、担当者への研修を全国展開する考え。就職活動中の学生などへのセクシュアルハラスメント対策では、対策事例を収集・公表し注意喚起を図る。併せて、4年度から中小企業に義務化されるパワーハラスメント防止措置に関する実務的観点からの研修を進める予定である。
テレワ-ク定着の壁
読売新聞の主要企業へのアンケ-ト調査で、テレワ-クの課題や限界を指摘
する声が相次いだ。新型コロナウイルスの感染急拡大で、政府は改めてテレ
ワ-クの徹底を訴えているが、取り組みの定着へ向けては更なる環境整備が
欠かせない。
感染収束後にテレワ-クが縮小すると考えられる理由として、
□意思疎通について
・人材育成や組織運営、イノベ-シヨンの創出には対面コミュニケ-ション
も重要。
・テレワ-クでも業務効率に差はないが、より質の高いコミュニケ-ション
を求めることが予想され、出社率は自然と高まる。
・健康管理や業務指示、コミュニケ-ションの円滑化を目的として、テレ
ワ-クの一定の制限を設ける。
□効率について
・出勤した方が生産性が高いと思われる業務が存在する。
・テレワ-クに向かない業務が多い。
・対面の方が緊急時の迅速な判断や対応が可能である場面が多い。
□顧客対応について
・得意先の要請により、対面での打ち合わせが増えることが想定される。
・外部への提出書類が紙媒体である限り、出社を余儀なくされる。
などがあがった。
以上
特別条項超えて働かせ送検――兵庫労働局
兵庫労働局(荒木祥一局長)は、調理師1人に対して1日10時間、週6日勤務をさせていた飲食業者を労働基準法第32条違反の疑いで神戸地検に書類送検した。36協定の特別条項では上限を月75時間と定めていたが、毎月第3~4週目にはこれを超えることになり、最長で月90時間の時間外労働を行わせていた。労働者には採用の段階で、9~21時のシフト制勤務、休憩2時間、週休1日との労働条件を明示していた。
未払い残業代 400万円の支払い命じる――東京地裁
ヘッドスパサロンなどを営むRアイディア㈱(東京都渋谷区、竹澤陽代表取締役)で働いていた労働者が、新型コロナウイルスの影響で解雇された後に、未払い残業代の支払いなどを求めた裁判で、東京地方裁判所(佐藤卓裁判官)は同社に計400万円の支払いを命じた。営業開始45分前に始まっていた朝礼は労働時間に当たるとして、過去2年間分の残業代と付加金の請求を認めている。労働者は解雇直後に労働基準監督署に相談し、助言を受けていた。
最賃対応 助成金活用へ強化期間――東京労働局
東京労働局(土田浩史局長)は、今年10月1日に改定される最低賃金を周知して賃金引上げに関する助成金の活用を促進するため、9~10月を「最低賃金・支援策周知強化期間」に設定した。関東経済産業局と連携して助成金に関するワンストップ説明会を開催するほか、同労働局と管内労基署幹部が使用者団体などを直接訪問し、中小企業での助成金活用に向けた要請を行う。周知強化期間の設定は初めて。東京地方最低賃金審議会が改定後最賃を答申する際、中小企業における継続的な賃上げに向けて各種支援策の活用をさらに促進するよう同労働局に強く求めていた。
2021年春闘での労使交渉
読売新聞の調査によると、今春の労使交渉で決定した項目として最も多かったのは「初任給の引き上げ」で36.9%だった。「20~30代の定昇引き上げ」は27.7%あり、将来の競争力維持に優秀な人材の確保が欠かせない背景がみえる。
コロナ下では働き方改革についても労使双方で推進する流れが続き、今春では「労働時間の削減・有給休暇の推進」が31.7%、「テレワ-クや時差通勤の推進」が24.7%と、労働環境の改善を決めた企業が多かった。
業種別では、「労働時間の削減・有給取得の推進」を決めたのは製造業の26.7%に対し、非製造業は44.7%に達した。
コロナ禍は対面の営業活動や会議、満員電車での通勤などを刷新する機会になった。在宅やオンラインで仕事の効率化をどう実現していくか。新たな雇用形態や人事評価を含め、ニュ-ノ-マル(非常態)に向けた改革が求められている。
以上