介護人材確保の緊急アクションプランに取り組む宮城県では、今年度からモデル事業所5社で「週休3日制度」の本格導入を開始した。1日10時間勤務とし、賃金水準は保ったまま年間約50日の休日増を見込む。メリットとして連休取得の実現や、同時に働く人数が増えた結果、残業削減につながったケースがみられる。一方、身体的負担や欠員へのフォロー体制などの課題も挙がっている。来年にはノウハウや課題解決策をまとめたハンドブックを作成する予定で、さらなる改善と普及をめざす。
月別アーカイブ: 2021年6月
退職金 5割超える減額は無効――東京地裁
エイブル保証㈱で働いていた労働者が退職金の減額は違法と訴えた裁判で、東京地方裁判所(矢島優香裁判官)は5割を超える減額は無効として、165万円の支払いを命じた。労働者は元部下が経営する取引先から、クラブでの接待を繰返し受け、気に入った外国人ホステスのビザ更新のため、在職証明書の偽造を依頼したことで諭旨退職となった。同地裁は懲戒解雇事由があると認めたものの「勤続の功をすべて抹消するほどの著しい背信行為とまではいえない」と評価。5割を超える減額は無効とした。
契約不更新問題 業務委託講師も労働者――中労委
中央労働委員会第一部会(荒木尚志部会長)は、大手予備校の河合塾で業務委託契約に基づく講師として業務に従事していた労働組合書記長が出講契約を打ち切られたとして救済を求めた紛争で、学校法人河合塾(愛知県名古屋市)の対応を不当労働行為と認定した。委託契約講師の労働者性を認め、組合員であることなどを理由とした不利益扱いに該当するとして原職復帰とバックペイを命じた初審判断を維持している。講師は法人の事業遂行に不可欠な労働力として組織に組み入れられていたほか、委託契約を法人が一方的・定型的に決定していることなどを重視した。
労組の除名処分は違法――東京地裁
東京都内のタクシー会社に勤める労働者が、労働組合の除名処分を不服と訴えた裁判で、東京地方裁判所は除名を無効・違法と判断し、同労組に慰謝料33万円の支払いなどを命じた。紛争は同労組が第2組合を設立しようとした労働者を除名し、ユニオンショップ協定に基づき会社に解雇するよう求めたことで起きた。同地裁は除名の前提となる理由はなく、手続き的相当性も欠くと指摘。解雇要求についても、同労組は他の労組に所属する労働者をユシ協定によって解雇できないと認識しており、不法行為が成立するとしている。
建設業で死亡災害倍増――東京労働局
東京労働局(土田浩史局長)は、建設業における死亡労働災害が前年に比べて約2倍に増加していることから、今年7月末までを対象期間とする死亡災害撲滅に向けた緊急対策を展開する。同労働局と管内労働基準監督署が工事現場に対して集中的な指導を実施するほか、大手建設業者との連絡会議などを開き、労災防止への対応を求めていく。建設業関係団体に対しては、建設事業者の取組みとして、現場の集中的な安全点検の実施や統括管理の強化、墜落・転落防止対策の徹底などを要請している。
育・介法改正案成立 男性に最大4週の育休――通常国会
6月16日に閉幕した令和3年通常国会で、厚生労働省が提出していた育児・介護休業法改正案が原案通り成立した。男性の育児休業取得促進のために、子の出生直後の時期に柔軟な取得を可能とする制度の創設が柱である。子の出生後8週間以内に4週間まで休業取得することができ、2回まで分割できる。小規模事業の労働者でも利用できるよう、代替要員確保や雇用環境の整備などに対して支援を行い、事業主の負担に配慮した制度運営を行うとしている。
SNS「炎上」 経営上のリスクに
SNSへの書き込みによる「炎上」が企業経営上のリスクに――厚生労働省の「技術革新(AI等)が進展する中での労使コミュニケーションに関する検討会」(守島基博座長)は、SNS上で外部に不満を訴え、企業が損害を受ける可能性が高まっているとする報告書案をまとめた。社内で不満を表明しやすく、しかも表明しても不利にならない雰囲気と企業文化を醸成する必要があるとした。相談窓口を設け、実際に機能させることが重要である。社内でのSNS利用を制限するのも不信感につながる。
労災手続き問題 元請は使用者に当たらず――中労委
中央労働委員会第3部会(畠山稔会長)は、建設工事の2次下請に雇用されている労働者の労災手続き問題に関する団体交渉に元請が応じなかった事案で、元請の不当労働行為を認定した初審命令を取り消し、救済申立てを棄却した。労働保険徴収法や労災保険法には元請負人のみを数次の請負事業の事業主とするという規定はあるものの、下請の従業員の労働条件決定や労務管理上の指揮命令とは関係がないと指摘。徴収法などの規定を根拠として、元請が労働組合法上の使用者に当たるとはいえないとした。
労働時間認定 持帰り残業へ留意点――厚労省が質疑応答・事例集
厚生労働省は過労死等の労災請求事案の労働時間認定に係る質疑応答・事例集を作成し、都道府県労働局労災保険課長に通知した。14個の質疑応答と7つの参考事例を載せており、これらを活用しながら適切な労働時間認定に努めて欲しいと要請している。質疑応答では、いわゆる持帰り残業や出張先のホテルでの作業、自宅でのテレワークなど、具体的な事案ごとの基本的な考え方と調査上の留意点を指摘。事例集は実際の認定事例をもとに、労働時間を認定する際のポイントを示している。
大卒男性が22.7万円――厚労省令和2年 賃構・初任給調査
厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、通勤手当を含む男性の初任給は大卒が22.7万円、大学院卒が25.4万円、高卒が18.0万円だった。大卒の企業規模別の水準は大企業が23.0万円、中企業が22.8万円、小企業が21.1万円であり、大企業との差は順に1900円、1.9万円と小さくない。前年比を求めると、大企業は6200円(2.8%)増、中企業は5400円(2.4%)増、小企業は1500円(0.7%)減だった。都道府県ごとの平均額についてみると、男性では22万円台に14地域が、女性では21万円台に17地域が集中している。
公益通報者保護 不利益取扱い禁止規定を――消費者庁
消費者庁は改正公益通報者保護法の指針案を公表した。大企業の義務となる内部公益通報体制の整備について、通報者への不利益取扱いを禁止する規定などを設けなければならないとしている。不利益取扱いした行為者に対しては、被害の程度を考慮し、懲戒処分を含めた適切な措置の実施を求めた。改正法は昨年6月に成立したもので、労働者数が300人以上の大企業に内部通報体制の整備と、公益通報に対応する担当者の選任を義務付ける内容。施行は令和4年を予定している。
コーポレートガバナンス・コード 「労働環境への配慮」を明記――東証
東京証券取引所は、来年4月から適用するコーポレートガバナンス・コードの改定案を明らかにした。上場会社は、社会・環境のサスティナビリティ(持続可能性)向上に向けて、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮、公正・適切な処遇の実現へ「積極的・能動的」に取り組む必要があると規定している。コロナ禍を背景に従業員の働き方の見直しが進んでおり、ニーズに対応した社内環境整備が求められるとした。
新型コロナウイルスの影響で求人数、業種と職種で明暗
3月の有効求人数は全国で約201万人と前年同月比10%減少した。
このうち「販売の職業」は約19万人で前年同月比20%、
「サ-ビスの職業」は約47万人で前年同月比16%と大幅に減少した。
一方、医療や情報通信、建築などの「専門的・技術的職業」は約45万人と
前年同月比6%減にとどまった。
また、コロナ禍前から人手不足が深刻だった「建設・採掘の職業」は
約12万人で前年同月比で17%増えた。
総務省の労働力調査によれば、2020年の転職者数は319万人だった。
転職者は増加傾向で2019年は351万人と比較可能な2002年以降で過去最多だったが、
コロナ禍で労働移動が停滞した。
今後はニ-ズの高い分野に人材移動を促すことが必要となる。
医療分野や在宅ニ-ズで需要が見込まれる情報通信関連などが受け皿に挙がる。
さらに、カギになるのが職業訓練で、パ-ソナル総合研究所のアジア太平洋地域の
14カ国・地域を対象とした2019年の調査では、勤務外で学習や自己啓発を
行っていない就業者の割合を見ると日本は46%だった。
14カ国・地域の平均13%より大幅に高く、職業訓練の余地は大きい。
以上