看護師自殺 試用期間延長が原因――札幌地裁が労災不支給取消し

新人看護師の自殺の労災認定を遺族が求めた裁判で、札幌地方裁判所(武部知子裁判長)は、業務起因性を認める判決を下した。病院側が能力不足を理由に試用期間を1カ月延長したことを、労働者に解雇の可能性を意識させるもので、労災認定基準が定める心理的負荷の強度「中」に該当すると評価。労働者に吃音の障害があり、入院患者からたびたび苦情が寄せられていた点や、業務上のミスに対して厳しい指導があった点を総合し、業務は精神障害を発病させる程度の強度があったと判断している。

柔軟な働き方導入支援を――東商要望

時間にとらわれない柔軟な働き方の導入促進を――東京商工会議所(三村明夫会頭)は、東京都の雇用就業施策に関する要望を取りまとめた。「コロナ後」を見据えて政府が今後推進していくべき施策として裁量労働制やフレックスタイム制、高度プロフェッショナル制度などの「時間にとらわれない柔軟な働き方」を挙げる中小企業が多いことから、企業に対する専門家による相談指導などの支援に取り組むよう訴えている。

男性育休促進制度 取得日数4週程度に――厚労省・検討案

厚生労働省は、男性の育児休業取得促進制度について方向性を明らかにした。子の出生直後の休業取得を促進するため、現行の育児休業制度よりも柔軟で取得しやすい新たな仕組みを作るとしている。対象期間を子の出生後8週間とし、取得可能日数を4週間程度に限定する案を打ち出した。現行の育児休業制度と同様、労働者の申出により取得できる権利を設定する。厚労省では、来年の通常国会に育児・介護休業法改正案を提出する見通しである。

諸手当 支給総額は1人平均4.8万円――厚労省・令和2年 就労条件総合調査

厚生労働省の就労条件総合調査によると、常用労働者の平均所定内賃金31万9700円のうち、諸手当の総額は4万7500円、全体に占める割合は14.9%だった。5年前の前回調査との比較では、所定内賃金が8100円、諸手当が5300円アップしている。「役付手当など」の支給額は2800円増の4万1600円、「家族手当など」は300円増の1万7600円などとなった。

均衡料率 2021年度から10%超に――健保連

健康保険組合連合会(健保連)は単年度収支がつり合う均衡保険料率が、来年度に10%を超える見通しであると発表した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済悪化の影響を試算したもので、保険料収入の大幅な減少を見込んでいる。現在の料率を維持すると、来年度は6700億円の赤字、均衡保険料率は10・2%になるとしている。料率が協会けんぽの平均である10%を超えると、健保組合を維持するメリットが少なくなるため、解散が多発する可能性がある。

テレワーク導入率が減少――東商調査

東京商工会議所(三村明夫会頭)がまとめたテレワークの実施状況に関する最新のアンケート結果で、今年5~6月時点に比べて導入企業割合が大きく低下していることが明らかになった。以前運用していたものの現在は取りやめている企業は2割に上った。そのうちの半数弱の企業が、テレワークを実施しない理由として「生産性の低下」を挙げている。東商担当者によると、「ネットワークの整備などの準備が不十分なまま導入した企業で、生産性が向上していないケースが多い」という。

事務課長の所定内58.0万円――人事院 職種別民間給与実態調査

職階別の賃金実態を把握している人事院「職種別民間給与実態調査」によると、課長級の平均所定内給与額は事務系58.0万円、技術系56.5万円だった。非役職者である係員級と比較すると、ともに2倍弱の水準となっている。対前年比では技術系でダウンがめだち、部長が4.7%減、課長は3.1%減と落ち込んでいる。定年年齢を61歳以上としている企業は、全体の15%だった。一定年齢到達を理由として給与減額を行う事業所の割合は、課長級で26.2%、非管理職では23.2%などとなっている。

再雇用者の基本給 定年前60%未満は違法――名古屋地裁

㈱名古屋自動車学校を定年退職し、1年更新の嘱託職員となった労働者2人が正職員との間の労働条件の差を不服として訴えた事件で、名古屋地方裁判所(井上泰人裁判長)は基本給の違いについて、定年退職前の60%を下回る部分を違法とする判決を下した。定年前後で職務内容や人材活用の仕組みが変わらないにもかかわらず、若年正職員の水準を下回るのは「生活保障の観点からも看過し難い」と指摘。60%を下回る限度で旧労働契約法第20条に定める不合理な労働条件に当たるとした。賞与の一部支払いも命じている。

リスク管理 管理職向けにプログラム――厚労省作成

厚生労働省は、管理者向けの職場リスクマネジメント力向上プログラムを公開した。近年、セクハラ、パワハラ、情報セキュリティーなどに端を発した不祥事が相次ぎ、職場環境の悪化や生産活動の停止に追い込まれるケースが少なくない。社内の業務ごとにリスクを洗い出したあと、リスク評価に基づいて優先順位を決定、実施計画を作成して対策に取り組む。厚労省のサイトから同プログラムセミナーの動画を視聴できる。

「テレワ-ク満足8割」

筑波大の「働く人への心理支援開発研究センタ-」は新型コロナウイルスの感染拡大によって進んだテレワ-クについて8割が満足しているとのアンケ-ト結果をまとめた。
テレワ-クを導入している情報・通信やサ-ビス業、メ-カ-など17社を対象に8月~9月に実施し、4343人から有効回答を得た。
テレワ-ク導入に「非常に満足」20%、「満足」32%、「どちらかと言えば満足」28%との回答を合計すると80%に達した。
テレワ-ク導入で起きた職場や仕事の変化については「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した割合が高かったのは、「メ-ル以外のコミュニケ-ションツ-ルの活用が進み、効率が良くなった」60%、「職場全体が無駄な業務を省くようになった」50%などだった。
一方で、コミュニケ-ションの難しさを実感する回答も目立った。「職場全体の雰囲気が見えにくくなった」73%、「業務以外のことに関する情報交換が少なくなった」72%、「新たな人や初めての人との関係を深めることが難しくなった」69%などが挙がった。
以上

シフト組み16人出向事例も――経産局・雇用シェア事業

各地の経済産業局が、コロナ禍を受けて雇用維持に課題を抱える企業と、人手不足が顕在化した企業をマッチングし、企業間の一時的な人材シェアを支援する事業を展開している。5月中旬から先行して取り組む北海道経産局では、これまでに成立した実例を公表、送出し企業内で16人の社員がシフトを組み、1日3~4人ずつ受入れ先で勤務する在籍出向契約を締結したケースなどを紹介している。関東経産局では埼玉県内のみで実施していた事業を新たに関東広域に広げ、再流行に備えて態勢を強化している。

過重労働 免疫力の低下認めず――大阪高裁

大阪府内のフレンチレストランで調理師として働いていた労働者が、ウイルス性疾患で死亡したのは労働災害に当たると遺族が訴えた裁判の控訴審で、大阪高等裁判所(木納敏和裁判長)は過労死と認めた一審判決を取り消した。一審の大阪地裁は、1カ月250時間に上る残業に約1年従事した結果、免疫力が下がりウイルス性疾患を発症・重症化したと判断したが、同高裁は血液検査の結果などから免疫低下はなかったとした。労働者の死亡をめぐっては、民事裁判も提起されており、2月には同地裁が会社の安全配慮義務違反を認め、8400万円の賠償を命じていた。

ウィズ・コロナ時代 業種・地域超え再就職促進――厚労省

厚生労働省は令和3年度、「ウィズ・コロナ」「ポスト・コロナ」の時代に対応し、業種・地域・職種を超えた再就職促進支援に力を入れる方針である。雇用調整助成金により雇用維持に取り組む事業主を支援する一方で、ハローワークに専門の就職支援ナビゲーターを新規増員して業種を超えた再就職促進に努める。大都市圏に専門の相談員を配置するなどにより、地方への就職希望ニーズにも応える考えだ。離職者の早期雇入れ企業に対する助成金上乗せ分を含め、全体の予算額は1200億円を超える。

就職氷河期世代 60以上の支援事業を予定――政府

政府は令和3年度、厚生労働省をはじめとする関係府省庁が一体となって就職氷河期世代支援を強力に推進する方針である。令和元年度からの3年間で総額650億円を上回る財源を用意、最終年の3年度には最大規模となる249億円以上を投じる見通し。関係府省全体の事業数は60件以上に達している。コロナ禍で大きなダメージを受けている就職氷河期世代を社会全体で受け止め、安定した再就職を促進していく狙いである。

偽装一人親方の排除を――国交省調査

国土交通省は、社員である建設技能者を個人事業主である一人親方として形式上取り扱い、社会保険加入などの規制逃れを図る「偽装一人親方」への対応に関するアンケート調査結果をまとめた。回答した建設業関連団体からは、明らかに実態が雇用であるにもかかわらず一人親方として契約している企業に対し、法的な処罰や、現場入場制限などの規制を求める声が挙がった。上位企業による取引停止措置などを提案する団体もあった。

旧労契法20条 5つの待遇差が不合理に――最高裁

最高裁判所は10月15日、日本郵便㈱の契約社員計14人が正社員との待遇差を違法と訴えた3つの裁判で、扶養手当など5つの待遇差を不合理とする判決を下した。不合理と認定したのは年末年始勤務手当、年始期間における祝日給、扶養手当、夏期冬期休暇、有給の病気休暇の5つ。いずれも目的・性質から職務内容などの違いを踏まえても、契約社員に支給しないのは旧労働契約法第20条に違反すると判断した。高裁で判断の分かれていた夏期冬期休暇については損害発生を認め、大阪高裁が示した通算契約期間が5年を超えた場合のみ不合理とした基準は採用しなかった。