奈良労働局(川村徹宏局長)は、管内企業の同一労働同一賃金への取組み状況を把握するために実施したアンケート結果を取りまとめた。大企業は今年4月から、中小企業では来年4月から適用が開始されるが、すでに対応の目処がついているとした企業の割合は、3割に留まることが分かった。同労働局では結果を受けて、複数の企業を集めたセミナー開催を予定する。新型コロナウイルス感染症防止のため、当面はセミナーを希望する企業に対し、1回の参加企業数を2社に絞った小規模開催を進めるほか、個別相談や出張説明、相談窓口の設置に力を入れていく。
月別アーカイブ: 2020年7月
パワハラ 慰謝料100万円の支払い命令――東京地裁立川支部
公立福生病院の事務課長を務めていた労働者が、上司のパワーハラスメントで適応障害を発症したと訴えた裁判で、東京地方裁判所立川支部(吉田尚弘裁判長)は、叱責は精神的苦痛を与える違法なものだったとして、病院の運営元に慰謝料計100万円の支払いを命じた。認定事実によると、上司は5カ月の間に7回、「馬鹿」「子供以下」「一回精神科に行ったら」などの暴言を一方的に浴びせていた。病院の安全配慮義務違反も認めている。パワハラは病院幹部も同席する会議の場でも行われていたが、注意・制止をしなかった。
脳・心疾患労災認定 「複数業務」で過重性評価――厚労省が検討結果まとめる
厚生労働省は、「複数業務要因災害」における過重負荷評価のあり方についての検討結果をまとめた。副業・兼業の促進・拡大に対応し、脳・心臓疾患などの労災認定の仕組みを明確にする狙い。複数事業場で就労する労働者に過労死などが発生した場合に、現行の脳・心臓疾患労災認定基準における「業務」の過重性評価を「複数業務」の過重性評価に読み替えて判断するとしている。
常用者男性 専門・技術職30.2万円に――厚労省 中途採用時賃金(元年度下半期)
令和元年度下半期に中途採用された常用者・男性の平均賃金は、専門・技術的職業30.2万円、事務的職業33.6万円、運送・機械運転の職業24.6万円などとなった。全体平均をみると、男性は26.5万円(前年同期比1.5%増)、女性は21.4万円(1.9%増)だった。伸び率は、前年に比べ鈍化している。規模別では、300人以上の企業において顕著に上昇しており、男性の25~44歳では3%を超える大幅な伸びがみられた。都道府県別をみると、東京・男性が32.4万円に。
残業代 2700万円支払いを命令――東京地裁
1カ月単位の変形労働時間制が無効になった際、所定労働時間と賃金額がどのような影響を受けるかが争点となった裁判で、東京地方裁判所(伊藤由紀子裁判長)は所定労働時間のうち8時間を超える部分の契約を無効と判断し、ハイヤー事業を営む会社に付加金を含め残業代計2700万円の支払いを命じた。会社は契約が無効になったことで、所定労働時間が短くなれば、それに伴い賃金も減るため、すでに通常の労働時間の賃金は支払っていると主張した。同地裁は「月給制は所定労働時間と賃金が厳密な対応関係になく、月ごとの賃金額の契約は無効にならない」として、1・25倍の割増賃金が必要としている。
労働・独禁・下請で総合対処――政府
政府は、このほど全世代型社会保障検討会議および未来投資会議(いずれも議長・安倍晋三内閣総理大臣)を開き、フリーランスの適正活用に向けたガイドライン案をまとめた。従来までの労働関係法に加え、独占禁止法、下請代金支払遅延等防止法の適用を前提に実効性のある総合的な対策を打ち出す方針としている。不十分な契約書面交付は独禁法違反、取引条件の一方的変更は下請法違反などと明確化するとともに、実態上「雇用」に該当するケースを示す。ガイドラインは、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省など省庁連名で作成する。
副業・兼業 労働時間を包括して決定――厚労省
厚生労働省は、副業・兼業における簡便な労働時間通算方法を示した「管理モデル」案を明らかにした。労働者が副業・兼業を開始する前に、本業での法定外労働時間と副業・兼業先での労働時間を合計した時間が月100時間未満、複数月平均80時間以内となるよう設定する。本業事業場は、労働者を通じて副業・兼業事業場に「管理モデル」の導入を要請する。各企業は、それぞれ決められた時間の範囲内で働かせるとした。
建設業 「偽装一人親方」是正へ――国交省
国土交通省は、建設業界の社会保険加入対策や労働時間規制などの強化に伴い、社員である技能者を個人事業者である一人親方として取り扱い、規制逃れを図る「偽装一人親方化」が進んでいるとして、抑制策の検討に着手した。このほど有識者などによる検討会を設置、職種ごとの実態把握や具体的な偽装一人親方化対策、適法な一人親方の処遇改善などについて議論していくとした。今年度内に中間取りまとめを行う予定。
顧客への賠償金 賃金控除は不当利得――横浜地裁
アートコーポレーション㈱(大阪府大阪市、寺田政登代表取締役社長)で引越し作業に従事していた労働者3人が、「引越事故責任賠償金」の名目での賃金控除を不服として提訴した裁判で、横浜地方裁判所(新谷晋司裁判長)は、控除は不当利得に当たるとして、計62万1000円の返還を命じた。同社は社内規程で、顧客へ支払った損害賠償の一部を負担させると規定していたが、実際には事故の有無にかかわらず、1日につき500円を賃金から天引きし、不当に利益を得ていた。
発症なくても安全配慮違反――東京地裁
アクサ生命保険㈱(東京都港区、安渕聖司代表取締役社長兼CEO)で保険営業業務に従事していた労働者が、長期にわたる過重労働は違法と訴えた裁判で、東京地方裁判所(久屋愛理裁判官)は同社の安全配慮義務違反を認め、慰謝料10万円の支払いを命じた。うつ病などの具体的な疾患を発症していなかったが、月30~50時間以上の残業を1年以上継続させた点を「心身の不調を来す可能性があるような労働に従事させた」と評価。労働者から長時間労働について相談を受けていたのに、改善措置を講じなかったことは安全配慮義務違反に当たると判断した。
東京都新事業 氷河期世代の採用後押し
東京都は、就職氷河期世代の安定雇用を実現するため、企業における採用を後押しする新事業を開始した。同世代を正社員として採用し、定着に向けた計画的な指導・育成の取組みを行った中小企業に対する助成金制度を創設、採用人数に応じて1事業所当たり最大90万円を支給する。企業での短期間の派遣就業を経て正規雇用につなげる「キャリア・チャレンジ事業」も開始した。企業側に費用負担は生じず、対象者の適性を見極めたうえで正社員として採用できる。
契約申込みみなし制度 3年間で458件指導――厚労省
厚生労働省は、労働者派遣における「労働契約申込みみなし制度」の運用状況を明らかにした。過去3年間で458件の行政指導を行ったほか、把握しているだけで少なくても22件が派遣先において直接雇用となった。「無許可派遣」や「偽装請負」に関する違反事例が多数を占めている。派遣労働者の同制度の認知度が10%に満たない実態も判明し、重大視している。厚労省では、現在、同制度の適用拡大を含めた労働者派遣法全般の見直しを開始している。