兵庫県労働委員会(滝澤功治会長)は、組合加入以降、時間外労働を行わせなかったことが不利益取扱いに当たるとして、一般土木建築資材の販売などを行う株式会社を不当労働行為と認定した。同じ業務に従事している非組合員と差別せず時間外労働を命じるよう求めたうえ、命令日までの約4年間につき、非組合員と時間外労働を折半していたと仮定して割増賃金相当分を支払うよう命じている。会社は平成28年4月にも同様の命令を受けていたが、その後に非組合員を管理職に任命したため公平な取扱いは不要になったとし、命令を履行していなかった。同労委は、権限や業務内容が変わっていないことから、事情の変更に当たらないと判断している。
月別アーカイブ: 2020年6月
建設技能者 能力に応じた処遇促進――国交省
国土交通省は、建設技能者のレベルに応じた適切な賃金支払いを促進するため、職種ごとの標準見積書の改定に乗り出す。技能レベルに応じて設定した「賃金目安」に基づいた賃金を下請企業が支払えるよう、標準見積書では職長手当を別枠計上するなどして、適正な労務費を元請に提示できる仕様に改める。今後、目安を設定済みの7職種を対象にワーキンググループを立ち上げ、今年度中に新たな標準見積書を作成する予定。
労災保険特別加入 「雇用類似」に適用拡大へ――厚労省
厚生労働省は、労災保険特別加入制度の適用対象拡大と加入手続き簡素化に向けた検討を開始した。副業・兼業など複数就業者の増加に対応し、特別加入制度の適用範囲を広げ、セーフティネットを拡充する考え。「雇用類似」の働き手の中でも、労働者に準じて保護することがふさわしい者の条件を明確化する見通し。昨年12月の労働政策審議会では、特別加入制度を「現代に合った制度運用」へ改善すべきと提言していた。
大企業に窓口設置義務付け――通常国会
大企業に対し内部通報窓口の設置を義務付けるなど、内部告発者の保護制度を強化する公益通報者保護法改正案が6月8日に参議院本会議で可決・成立した。制定以来初の法改正で、公布から2年以内に施行する。義務違反の企業には消費者庁が助言・指導・勧告などの行政指導を行い、勧告に従わない場合は企業名を公表する。窓口には通報の受付け、調査、必要な是正措置を講じる担当者を配置しなければならず、担当者には刑事罰付きで通報者の特定につながる情報の秘密保持義務を課した。保護の対象者に役員と退職1年以内の労働者を追加している。
健康経営 意識・行動変容などを評価――経産省
経済産業省は、企業が従業員の健康の保持・増進に投資した効果を測定する際の手引きとなる「健康投資管理会計ガイドライン」を策定した。健康投資施策の具体的な範囲を示したほか、効果指標として「従業員の意識・行動変容」など3分野を挙げている。具体的には、禁煙の継続率や職場における体操の継続率などを指標とする。経産省は、投資効果の可視化によって適切な経営判断や社外への開示を行えるようにし、健康経営の取組みを促進する考え。
「休業支援金」を創設――厚労省の2次補正
雇用調整助成金の拡充と新給付制度の創設などを盛り込んだ令和2年度第2次補正予算案が通常国会で成立した。雇調金の日額上限を現行8330円から1万5000円に引き上げるとともに、企業から休業手当を受けられなかった労働者に対して月額上限33万円を支給する「新型コロナ対応休業支援金」を創設することが決まった。雇調金支給に当たっては、処理にかかわる人員態勢の強化を図る一方、社会保険労務士との協力態勢を整備し、迅速化をめざすとしている。厚生労働省では、雇用、生活支援などに総額約5兆円を追加投入する。
インフォコム 再雇用後も年収維持可能に
インフォコム㈱(東京都渋谷区、竹原教博代表取締役社長)は今年4月、60歳定年後の人材に適用している嘱託再雇用制度の運用方法を改定した。役割に応じて社員を格付ける「ミッショングループ制度」の適用を継続し、従来は支給していなかった賞与も支給する。人事評価に基づいて決まる役割のレベルが変動しない限り、年収水準は定年後も下がらなくなる。一方で、短日・短時間勤務の要望に応えるため、個別合意によりフルタイム以外の勤務形態も選択可能としている。現在12人に留まる60歳超の人材は、6年後に100人程度まで増える見込みで、優秀な人材の確保をめざす。
福島県・介護現場のクラスター対策 事業継続へ相互応援制
福島県は、老人介護施設で新型コロナウイルスのクラスターが発生した場合に備え、他の法人から応援の介護職員を派遣する相互支援事業を開始した。感染施設における代替人員派遣は当該法人内で対応することを前提に、結果として人員不足になる傘下の各施設へ玉突き支援を行う。応援に出向く職員は入所者の部屋ごとに配置し、最長で2週間出張させるとした。同県内650施設に事前登録を求め、相互支援で緊急時の介護サービス継続をめざす。出張に要する交通費や宿泊費は、同県が負担する。
被用者保険拡大 パート多数企業で「コロナ禍」――通常国会
厚生労働省が、今通常国会に提出していた年金制度機能強化法案が成立した。短時間労働者に対する被用者保険の適用対象拡大に向け、段階的に事業所規模要件を引き下げていく。国会審議では、新たに適用対象となる中小規模事業所において短時間労働者を多く雇用している一方、新型コロナウイルス感染症の直撃を受けていることを重大視した。政府は、一時的な景気変動にとらわれない長期的視点に立った法改正であり、新型コロナウイルスを要因とする修正は行わない姿勢をとった。
「新型コロナウイルス感染症の流行への対応が就労者の心理・行動に与える影響-3」
シリ-ズで掲載しています、リクル-トワ-クス研究所と国内大学所属の研究員有志のグル-プが2020年4月に行った調査(有効回答4363)から分析した主な発見事実の最終回です。
[4] 就労者の心理・行動を規定する要因
就労者の心理(感染リスク、一貫性感覚、不安、職務ストレス、孤立感)及び行動 (学習棄却、両利き性、関係構築)を規定する要因は様々であり、また中身によって微妙なバリエ-ションが存在する。
ただし、以下の諸要因は、就労者の心理・行動の多様な側面に対して影響を与える。就労者に対してポジティブな影響を与えるものには+、ネガティブな影響を与えるものには-を、どちらの影響も与えるものには+/-を記している。
(1) 本人要因 : 神経症傾向(-)、自己信頼(+/-)、エビデンス重視(+/-)、
現実重視(+/-)、年齢(+/-)、オンラインツ-ルリテラシ-(+/-)、
生活物資・感染予防物資の確保(+/-)
(2) 職場要因 : リモートワ-クの実施(+)、上司支援(+)、相互支援(+)、
公正な扱い(+/-)、心理的安全(+)
(3) 企業要因 : 新型コロナ対応の充実(+)
「+/-」が多いことから明らかなように、ある要因の効果が正負半ばする事が多い。
また、新型コロナウイルス流行によって生じた変化が就労者の心理・行動に及ぼす影響は限定的で、それ以前からの生活環境・職場環境の影響の方が大きい。心理的なネガティブ状態が、創造的な行動を引き出すという逆説(パラドクス) も観察された。
※発見事実がもたらす示唆
新型コロナウイルス感染症の広がりは、日本の就労者に少なからぬ影響を与えている。それはまた、不安の増大に代表されるように人々の心理面にも影を落としている。
希望があるとすれば、こうした事態が日本の就労者の幸福を奪うには至っていないということ、加えて、少なからぬ個人が新型コロナウイルスを取り巻く状況に対し、能動的に向き合っていることが本調査の発見事実から示唆されている。
同時に、新型コロナウイルスの流行により影響を大きく受けている人、こうした影響を吸収するバッファ-を多く持ち合わせている人がいることも示された。
ここでの発見事実は、こうした個人を特定し、支援の手を差し伸べることを可能にするといえよう。
以上
大手企業モデル退職金 会社都合の定年2511万円――中労委 令和元年退職金・定年調査
大手企業のみを対象とする中央労働委員会「退職金、年金および定年制事情調査」によると、大卒・総合職の会社都合時の定年モデル退職金は2511万円(43.0カ月分)だった。2年前の前回調査と比べると6.8%落ち込んでいる。退職年金制度のある企業は94.4%で、このうち確定拠出年金を導入している企業は67.9%だった。マッチング拠出は、47.8%の企業が採り入れている。
「曖昧な雇用」を保護へ――連合
連合は、インターネットを通じて仕事を請け負うフリーランスなど、労働関係法令の保護を受けにくい「曖昧な雇用」で働く就業者を対象とした会員制度を新設する。「連合ネットワーク会員」として登録すると、Q&A方式の回答コーナーを利用できるほか、有料特設メニューも用意し、弁護士への相談や福利厚生サービスが受けられるとした。集団的労使関係を前提とした組織化にもつなげていく。
21年大卒求人初任給 総合職21.8万円に――労働新聞社調査
2021年3月卒の大卒求人初任給を労働新聞社が調べたところ、集計した全4職種で前年結果を上回り、総合職は3000円増の21・8万円、技術系は3600円増の21・6万円などとなった。総合職では、比較可能な企業の4割が増額している。新型コロナウイルスによる経済停滞が懸念されるなか、少なくとも来春に就職を控えた世代に関しては、ベアの影響や技術者不足を背景に1%超の改善が続いている。
ハラスメント対策 周囲にも対応求める――全信協
一般社団法人全国信用金庫協会(佐藤浩二会長)は、当事者に留まらず周囲の人材が持つべき意識、とるべき行動を示した「ハラスメント対策ハンドブック」を作成した。問題を放置すれば悪影響の連鎖で職場の生産性が低下し、人材流出にもつながる恐れがあるとして、3大ハラスメントが起きない職場づくりを推奨している。ケーススタディでは「ミスを繰り返す職員への指導」、「できる上司からの追い込み」などを取り上げ、同僚や当事者の同期人材がどのように対応すれば良いかを説いている。
新型コロナウイルス 感染者3人を労災認定――厚労省
厚生労働省は5月20日までに、新型コロナウイルスに感染した3人の労働者を労働災害と認定した。請求のあった43件のうち、医療従事者2人、生活関連サービス業1人の労災給付を決定している。厚労省は、医療従事者や顧客との接触が多い販売職、クラスターが発生した事業場の労働者などは、感染ルートが明らかでなくても、個別調査をして労災認定していく方針を掲げている。加藤勝信厚労大臣が5月15日の閣議後の会見で、感染者を初めて労災認定したと明かしていた。
新助成金制度 休業手当不払いを救済――政府
政府は、新型コロナウイルスに関する「緊急事態宣言」の解除とともに、医療体制を強化しつつ、「経済活動の再起動」をめざした各種経済対策を打ち出す。雇用調整助成金は抜本的に拡充し、助成額を1人日額1万5000円まで特例的に引き上げ、「世界で最も手厚いレベル」の休業支援とする。労働者が直接申請することができる新たな助成制度の創設も検討中である。製造業、物流・運送業、旅行業、金融業など合計81業種を対象とした感染拡大防止ガイドラインも作成し、活用を呼び掛けている。