厚生労働省は、今通常国会で成立し4月1日に施行した改正労働基準法の運用に関する通達と「Q&A」をまとめた。消滅時効期間を5年に延長したものの、「当分の間」は3年に短縮する「経過措置」を設けたことについて、直ちに長期間の消滅時効期間を定めると、労使関係が不安定化し、紛争の早期解決・未然防止という趣旨に反するためとした。賃金債権は大量かつ定期的に発生するケースが多く、斉一的処理の要請が強いことから、改正法の施行日以後に支払期日が到来する賃金請求権が適用となる。
月別アーカイブ: 2020年4月
有期労働契約 不更新条項による満了認めず――福岡地裁
博報堂で働いていた労働者が、無期転換申込権が発生する直前の雇止めを不服として訴えた裁判で、福岡地方裁判所(鈴木博裁判長)は雇止めを無効とする判決を下した。労働者は1年間の有期労働契約を29回更新してきたが、無期転換ルールの開始とともに、同社が契約期間の上限を5年と定めたため、30年3月末で退職となった。雇用契約書には不更新条項があったが、同地裁は約30年の勤続を重視。契約書への署名拒否は契約打切りにつながる状況にあったとして、契約満了の合意を認めず、違法な雇止めと判断した。
職責限定し基本給7割に――七欧通信興業
電気通信工事業の七欧通信興業㈱(東京都荒川区、鳴海広司代表取締役社長)は、定年年齢である60歳を迎えた人材を「技術指導員」として再雇用する制度を運用している。再雇用後は業務の中心が「後輩の指導」となって職責が限定されるため、基本給は定年前の約7割に低減する。評価は年1回行い、63歳の時点で過去3年分の結果を踏まえて月例賃金の見直しを実施する。職務遂行に必要な能力が衰えていないかをチェックするため、ジョブ・カードを参考にした「職務能力考課シート」を活用する仕組みを整えた。会社の業績次第では、夏冬の一時金も。
新型コロナ対策 ウェブセミナー600本公開――新潟商議所
新潟商工会議所(福田勝之会頭)は、会員企業向けに配信しているインターネットセミナーを期間限定で誰でも閲覧できるよう無料公開している。新型コロナウイルス感染拡大の影響により様ざまなセミナーが中止や延期に追い込まれているなか、非会員にも新人研修など社内の人材教育に利用してもらう狙い。ビジネスマナー研修・PC講座や観光客への接客方法、経営革新・事業承継などに関するセミナーを約600本、5月まで提供している。
フルタイム男性 ピークは42.4万円に――厚労省令和元年賃構調査(概況)
厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査(概況)」によると、一般労働者・男性の所定内賃金は33.8万円だった。ピーク時である50~54歳で前年比0.5%減の42.4万円となるなど、中高年層のダウンがめだつ。高卒でも同様の傾向がみられ、50歳代で1%程度落ち込んだ。一般労働者・女性の所定内賃金は25.1万円で、男女間格差は74.3%と前年から1ポイント縮小した。短時間労働者・女性の時間給は2.0%(20円)アップして1127円に。
感染症関連相談へ迅速対処――厚労省2年度
厚生労働省は、令和2年度の地方労働行政運営方針を明らかにした。新型コロナウイルス感染症の拡大への対応を前面に打ち出したほか、長時間労働是正に向けた監督指導の推進、外国人労働者の雇用管理改善、テレワークの普及拡大などが重点政策となっている。全都道府県労働局に設置している特別労働相談窓口において、新型コロナウイルス感染症関連の事業主からの相談に迅速に対応する。外国人労働者に対する労働基準関係法令違反については、司法処分を含め厳正に対処するとした。
附帯決議 指導・監督の徹底を要請――通常国会
厚生労働省が通常国会に提出していた労働関係法改正案が、3月末までに原案通り成立した。労働基準法改正案と雇用保険法等改正案の2本で、前者は賃金請求権の消滅時効の5年への延長(当分の間3年)、後者は65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置の努力義務化を規定した。労基法改正に対する附帯決議では、労働基準監督署による指導・監督を徹底し、賃金未払い事案に対する是正指導を厳正に行うことが重要と指摘。雇用保険法等改正については、高年齢者就業確保措置を講ずる場合、個々の労働者の意思を十分尊重するよう求めている。
理事の無期転換認める――横浜地裁
学校法人信愛学園の元理事が、有期契約の更新拒絶を不服として訴えた裁判で、横浜地方裁判所(新谷晋司裁判長)は元理事の労働者性を認め、雇止め無効と無期労働契約への転換を命じた。法人の理事や役員とは委任契約などを交わすのが一般的だが、同地裁は勤務実態や報酬などから、実質は労働契約と判断。更新拒絶には合理的な理由がなく、反復更新した有期労働契約が通算5年を超えていることから、無期労働契約の地位を認定した。転換後の労働条件は最後に更新した際の契約書と就業規則によるとしている。
都内の大卒求人初任給 専門・技術職は21.2万円――東京労働局 学卒者の初任賃金
今春入社した学卒者の求人初任給を集計した東京労働局の「学卒者の初任賃金」調査によると、大卒の専門・技術職は21万2100円、事務職は20万4200円だった。前年からの伸び率は1%以下で、ほぼ横ばいとなっている。階級別分布状況をみると、高卒は、18万円以上の企業が合計5割超を占めている。20万円以上に設定するケースも少なくない。
「有事の際の資金調達方法」
新型コロナウイルスの猛威が世界を襲っています。日本でも4月8日から5月6日迄の間、緊急事態宣言が発令されました。全世界全業種全世代におよぶ被害は甚大で、経済における影響は日々深刻化しています。
下記は企業経営を支援する策としての「有事の際の資金調達方法」の一例です。
◇ 日本政策金融公庫のセ-フティネット貸付
・調達目安 国民生活事業4千万円、利率1.91%/中小企業事業7億2千万円、利率1.11%
◇ 信用保証協会のセ-フティネット保証4号
・調達目安 一般枠とは別枠で2億8千万円/借入債務の100%を保証
◇ 当座繰越の空き枠・契約更新時期の確認と未利用枠の利用
・調達目安 当座貸付の未利用額
◇ 定期預金(社長個人も含む)の解約依頼
・調達目安 定期預金の預け額
◇ 生命保険の契約者貸付制度の利用できる額と利用方法を確認
・調達目安 生命保険の解約返戻金の70~90%
◇ 倒産防止共済(経営セ-フティ共済)の一時貸付制度
・調達目安 解約手当金の95%
◇ 雇用調整助成金
・調達目安 休業手当(平均賃金の60%以上)の2/3、4/5(中小企業)/解雇しない場合は3/4、9/10(中小企業) 上限額8,330円
※ 状況により変更等が予想されますのでご利用時にはご確認下さい。
※ 新たな支援策が発表されることも予想されますので随時報道等でご確認下さい。
全国社労士会連合会 ILOと協力覚書締結
全国社会保険労務士会連合会(大野実会長)は3月23日、ILOとの間で、社労士制度の導入促進などに関する協力覚書を締結した=写真。新興国や発展途上国などにおける社労士制度の導入支援を展開していくほか、ILOが掲げるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現に向け、労働・社会保障法令の遵守を通じた労働者福祉の向上などに貢献する社労士の役割に関する意見交換を行うとした。締結に当たり大野会長は、「ベトナムやマレーシアといった制度の導入を検討している国々への支援など、積極的に活動していきたい」と意気込みを表明した。
使用者責任 「逆求償」を認める――最高裁
業務中に事故を起こした労働者が、被害者に支払った賠償金の返還を会社に求めた裁判で、最高裁判所第二小法廷(草野耕一裁判長)は、労働者の請求を認める判決を下した。民法の使用者責任は会社が被害者に賠償した場合、労働者に対し賠償額の返還を求める「求償」が認められている。労働者が先に賠償した場合のいわゆる「逆求償」が可能かどうかはこれまで判例上明らかでなかった。最高裁はどちらが先に賠償したかによって会社の負担額が異なるのは「損害の公平分担」の観点から相当でないと判断。労働者の逆求償権を認め、返還額審理のため高裁に差し戻した。
職業情報を「見える化」 日本版O―NET始動――厚労省
厚生労働省は、職業情報提供サイト「日本版O―NET(オーネット)」の運用をスタートさせた。約500に及ぶ職種を対象に、仕事や作業の内容を細かく分解したうえ、職務遂行に必要な技術・技能に関する数値データなどが明確になる。職業情報の「見える化」を図る狙い。労働者の転職・再就職活動に役立つほか、企業も採用活動や人材活用に向けたシミュレーションなどが可能としている。アメリカ労働省が運用する「O*NET」を手本として整備した。