継続雇用制度においては、合理的裁量の範囲で労働条件の提示が可能。しかし、定年前と仕事や労働時間を変えず、賃金を大幅に減らしたり、それを行うために業務内容や労働時間を大幅に変更・縮小したりするような措置は、高年法の趣旨に反し、違法と判断される可能性がある。
月別アーカイブ: 2018年7月
引上げ事業所の平均2.7%――厚労省・小企業の賃金改定調査
厚生労働省の賃金改定状況調査によると、今年6月までに賃金引上げを実施した小規模企業の平均改定率は2.7%となり、前年結果に比べて0.1ポイント改善した。回答事業所のうちの44.8%が引上げを実施し、改定を実施しない事業所37.7%を7.1ポイント上回っている。対象労働者の1時間当たりの所定内給与額は、フルタイム労働者が22円アップの1,621円、パートタイム労働者が16円アップの1,085円となっている。
中小の女性活躍推進支援へ5種類の研修――東京都
東京都は、中小企業における女性の活躍推進の取組みを支援するため、各社の状況に応じた適切な研修の受講機会を提供する「女性の活躍推進加速化事業」をスタートさせた。取組み状況別や対象者別の5種類の体系的な研修を実施し、中小企業での女性活躍推進に関する責任者の設置や女性活躍推進法における一般事業主行動計画の策定、行動計画の目標達成に向けた課題解決までを後押しする。
「2018年度都内中小企業の賃上げ」
東京商工リサ-チが都内中小企業1184社、資本金1億円以上の大企業467社から得た回答では、
83.6%が賃上げを実施し17年度を6ポイント上回った。
その内訳は、
定期昇給のみ・・・30.4%
定期昇給とベア・・・15.2%
定期昇給と賞与・・・14.7%
定期昇給、ベア、賞与・・・6.4%
となっており、
賃上げを実施する理由としては、
従業員の引き留め・・・52.9%
従業員の採用・・・20.9%
業績の回復・・・20.6% だった。
中小零細企業では、“賃上げを実施しても優秀な人材確保に直結しない” “外国人労働者の受け入れ拡大に向けた法整備を急ぐべき”といった意見も聞かれた。人手不足が深刻な中小企業ほど賃上げ額も大きい傾向があり、特に経営への負担が増すベアの額は中小企業の方が大きくなっており、大幅な賃上げに踏み込むと 経営を圧迫させる懸念材料にもなる。 賃上げによる従業員1人当たりの年間の経費負担増加額が“5万円未満”にとどまる中小企業は44.3%で大企業を16.9ポイント下回っているが、“30万円以上” は大企業を8.4ポイント上回る17.4%であった。 以上
東京は0.8%増の46万円に――29年平均の現金給与総額
毎月勤労統計調査の地方調査によると、平成29年平均の現金給与総額は東京46.2万円、大阪37.9万円、愛知39.3万円などとなった。対前年比では東京が0.8%増と伸びたのに対し、大阪は0.4%減、愛知は0.1%減と落ち込んでいる。 47都道府県の8割強で前年比プラスとなり、4割強で1%以上アップした。所定内給与の地域間格差は、東京100に対して大阪、愛知とも82で、最も低い青森は63となっている。
「ハラスメント条約」制定に道筋――ILO・委員会報告採択
ILO(国際労働機関)は今年の第107回総会で、「仕事の世界における暴力とハラスメント」に関する「勧告付き条約」の制定に向けた委員会報告を採択した。ハラスメント全般を照準に収めた11年ぶりの条約(190号)制定の道筋が描かれ、来年の第2次討議を経て正式に決まれば、日本も国内法令の整備が要請される。同報告は、「身体的、精神的、性的または経済的危害を引き起こす許容し難い行為」とハラスメントを定義し、「労働者」や「加害者・被害者」の範囲も幅広く対象に含めた。
高プロ制へ全数立入調査――参院厚労委「付帯決議」
参議院厚生労働委員会は、働き方改革推進法案の採決に伴い高度プロフェッショナル制度導入事業場に対し、労働基準監督署による全数立入り調査を実施すべきなどとした「附帯決議」を行った。使用者は労働時間にかかわる業務命令や指示のほか、働き方の裁量を奪うような成果・業務量の要求、納期・期限の設定などをしてはならないことを省令で明確化し、監督指導を徹底するとしている。法令遵守を徹底させるため、労働基準監督官の増員を政府の「優先事項」と位置付けた。
女性活躍で男性の責任者指名――ケア・プランニング/働きやすい環境づくり
介護業の㈲ケア・プランニング(東京都荒川区、中原修二郎代表取締役社長、100人)は従業員が働きやすい環境づくりに力を入れている。全従業員の半数以上を占める女性が柔軟に働くことができるように、時短正社員の制度を設けた。女性活躍推進の責任者も設けたが、男女を公平に取り扱い、決して女性だけを特別に扱わないよう、あえて男性を指名した。多様化する就労形態を踏まえ、各事業部や社員間の情報共有の態勢作りにも取り組む。役員会、事業部管理者が集う実務者会議を開くなどの対策を講じる。
高度専門職を3段階処遇――ノバレーゼ
ブライダル事業大手の㈱ノバレーゼ(東京都中央区、荻野洋基社長)は今年3月、メリハリのある給与体系を実現するため、役職と等級の対応関係を定義したうえ、役職手当を平均で約3割引き上げた。プランナー、ドレスコーディネーターなどの区分ごとに2系統のキャリアパスを明示したもので、今後はマネージャー層だけでなく、専門性の高い人材についても高度専門職として3段階で処遇する。 併せて全社共通だったコンピテンシーも、計10職種別につくり込んだ。目標とすべき役職の姿を目にみえる形で示すことで、社員の挑戦・成長を促していく。
アルバイト 昇給時期早め意欲向上―― 一風堂
㈱力の源ホールディングス(福岡県福岡市、河原成美代表取締役会長兼社長)が展開するとんこつラーメンのグローバルブランド「一風堂」は来月にも、育成ツールのなかに評価システムを落とし込んだアルバイト向けの新制度を導入する。ゲーム感覚で作業を学べ、時給昇給時期が早まるため、モチベーションアップにつながる。効率的に指導でき、店長などの負担が減る。
「大卒初任給の伸び続く」
日本経済新聞社の調査によると、2018年度入社の大卒初任給の平均は、17年度と比較できる企業全体の平均で0.7%増の21万4700円だった。15年度に21万円台となり、人手不足や新卒者の売り手市場が続く中、若手の待遇改善により優秀な人材を獲得しようという動きが一段と鮮明になっている。業種別の伸び率では建設業1.2%、陸運業0.8%と、人手不足への危機感が強い業種で全体の平均を上回った。佐川急便では“人材確保のための採用強化策の1つ”として9.5%増の23万円となった。金融業では、超低金利で収益環境が厳しい銀行は0.2%にとどまったが一方、証券は2.1%と高かった。また新興企業だけでなく、優秀な若手の獲得と育成が事業拡大には不可欠である、人材への投資を充実させたい、ととらえている企業での伸び率は顕著に高い傾向であった。 以上
全国転勤型の基幹職に一本化――損保ジャパン日本興亜ひまわり生命
損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険㈱(東京都新宿区、大場康弘社長)は今年7月、転居を伴う転勤の有無で分けていた総合職層を「基幹職」に一本化する新制度を導入した。従来はグローバルとエリアで別々だった給与体系を統一し、固定化された役割意識の払拭をめざす。一方でフルタイム契約社員のさらなる有効活用を図るため、給与の上限を主任レベルの下限付近まで引き上げた。無期転換先の区分として「専任職」を新設し、退職金、確定拠出年金を適用している。既存人材の役割拡大を狙い、新たにチャレンジ度を評価するMBOを全社的に採り入れている。
「心理的安全性」重視し意思疎通を活性化――愛知経協・働き方改革報告書
愛知県経営者協会(加藤宣明会長)は、「働き方改革時代のマネージャーのあり方」と題する報告書をまとめた。限られた時間で効率よく働くという働き方改革を成功させるため、マネージャーは、会社の方針を理解し部下に伝え、業務改善について会社に上申する必要があるとした。会社側としては、研修で期待する役割を伝達したり、安心して発言や対話のできる「心理的安全性」の高い職場を醸成するべきと訴えた。
高プロ制・労働時間の把握は不要――働き方改革法案が成立
政府が通常国会に提出していた働き方改革推進法案が一部修正のうえ成立した。時間外労働規制の強化、高度プロフェッショナル制度の創設、不合理な待遇格差の解消などが改正の柱で、労働基準法施行後最も大きな改正と位置付けている。注目された高度プロ制では、一部修正し、対象労働者が同意を撤回する場合の手続きを明確にしなければならないことにした。一定の健康管理時間を超えた際に義務付けられている医師面接の実施に関して、労働者が拒否している場合は高度プロ制の適用に影響しないなどの 運用上のポイントも明らかになっている。