経営側が過大な負担を懸念――同一労働同一賃金ガイドラインで

政府の働き方改革実現会議(議長・安倍晋三総理大臣)は、厚生労働省が近々にまとめる検討会報告の考え方に基づき、同一労働同一賃金ガイドラインを作成する見通しとなった。どのような賃金格差が不合理かを明確にすることによって紛争を防止するとともに、非正規社員の待遇改善に向けて誘導していく意向である。使用者側からは、合理性の立証責任を企業側のみに課すなど過大な負担とならない制度にすべきと訴えている。

全単組が「個別賃金」要求へ――JAM17春闘

中堅中小が大半を占める金属ものづくり系下請け企業の労組でつくるJAM(宮本礼一会長)は、来る17春闘で掲げる賃上げ要求の方式を「個別賃金」に原則統一する。「上げ幅」ではなく賃金の「絶対額」を求めるもので、参加の全単組が30歳26万円、35歳30万5000円への到達をめざす。今後ますます困難になる人手の確保に必要だと訴えるだけでなく、会社が賃金原資を確保できるよう、取引企業に対する公正取引要請を経営側に促すなど社会運動としての性格も持たせた活動に取り組む方針。組合員の反応もよく、このほど開催した中央討論集会は、ほぼ異論なしで通過。1月20日に正式決定する。

改定額5,200円弱へ微減―厚労省・賃金引上げ等実態調査

平成28年の賃金改定額は、前年比微減の5,176円に――。厚労省の賃金引上げ等実態調査によると、規模100人以上の1人平均賃金改定額は27年を106円下回り、改定率は同率の1.9%となった。5,000人以上が1,500円以上ダウンするなか、中堅・中小がともに500円以上伸び、それぞれ5,319円、4,482円となっている。定昇制度を持つ企業のベア実施率は、管理職17.8%、一般職23.3%となり、2~3ポイント落ち込んだ。改定に当たって最も重視した要素を聞いた設問では、例年同様に「企業の実績」が5割を超える一方、「労働力の確保・定着」が11.0%とめだって伸びている。

過重労働の抑制へ優良企業視察――全国労働局長

全国の都道府県労働局で、模範となる労働環境を整備したベストプラクティス企業を選定し、局長自らが視察した。11月の過重労働解消キャンペーンに併せて今年度、初めて全国的に実施に移した。優良企業を各労働局管内に広く紹介することが目的である。長時間労働削減をめざすワークショップ形式の研修を進めている小売業、業務効率化に取り組んでいる造船業などを視察している。

「3000円以上」の賃上げへ――金属労協17春闘

自動車、電機、鉄鋼・造船など大手金属系メーカー労組の5産別でつくる金属労協(JCM・相原康伸議長)は12月2日、東京都内で第59回協議委員会を開催し、17春闘方針を決定した。底上げや格差是正に力を入れた16春闘と全体の枠組みは同じで、賃金については「3000円以上」の賃上げ(ベア)要求を行う方針。率換算だと1%で、5産別が一枚岩で要求に取り組む。大手・中小(正規・非正規)間の水準的開きを縮める一方、バリュー(サプライ)チェーン全体の付加価値循環運動も継続する。

事務課長のピーク61.6万円――人事院・28年民間給与の実態

人事院の職種別民間給与実態調査によると、課長級の所定内給与がピークを迎えるのは、事務課長が52~56歳未満61.6万円、技術課長が同59.5万円だった。大卒初任者を含む係員の20~24歳未満の水準と比べると、それぞれ2.86倍、2.81倍となっている。家族手当制度を導入する割合は、前年並みの76.8%だった。配偶者に手当を支給する企業の85%が収入制限を設けており、そのうちの3分の2が「103万円」、3割弱が「130万円」としている。

外国人の正社員化を支援――静岡県

静岡県は、外国人労働者の正社員化を促進する「外国人就業・定着システム構築事業」をスタートさせた。就労意欲の高い外国人と正社員採用に前向きな県内企業とをマッチングさせるほか、就業後には企業へアドバイザーを派遣して雇用環境の質的向上を図る考え。外国人雇用で先進的な取組みを行う企業事例の収集も進めており、今年度末を目途に事例集として取りまとめる予定である。

17春闘 ベア要求「2%基準」へ――UAゼンセン

日本最大産別のUAゼンセン(松浦昭彦会長)は11月22日、来る17春闘で「2%基準」のベースアップ要求を行うなどとする本部方針の素案を固めたと発表した。定昇制度がなく賃金体系維持分が明確でない場合の要求基準は、9500円または4%。前日の中央執行委員会で決定し、より低い水準の要求となることが見込まれている金属労協に先駆けて方針案を公表することで、自ら春闘相場を形成していきたい考え。「65歳定年」要求も新たに打ち出した方針案は、1月31日の中央委員会で正式に決まる。

3年連続増で大卒・男性20.6万円――厚労省・28年決定初任給調査

厚生労働省の賃金構造基本統計調査(初任給)の概況によると、大卒の決定初任給は、大卒・男性が0.7%増の20万5,900円、女性が0.6%増の20万円だった。ともに3年連続のプラスとなり、女性が初めて20万円台に乗せている。企業規模別では100人未満の小企業でめだった伸びがみられ、男性は3,800円、女性では4,400円アップした。一方で過去2年にわたって顕著な伸びを示していた高卒は、男性が0.1%増の16万3,500円と横ばいで、女性は0.6%増の15万7,200円となっている。

「エンジニアの満足度」

全国のメ-カ-で働く研究・設計・開発系の業務に就くエンジニアのうち、中小企業(従業員300人以下)で働く200名と、大企業(従業員1001人以上)で働く200名を対象にした「企業規模と働きがい」に関するアンケ-ト調査が発表された。
項目別に5点満点で回答した結果、中小企業が大企業より勝っていた項目は「仕事のやりがい」のみで、他の項目は全て大企業の方が高い結果となった。
大企業と比べ、中小企業で働くエンジニアの間で特に満足度が低かった項目は、「研修制度」「福利厚生」「会社のブランド」となった。

大企業で働くエンジニアに、自分の働く企業や職場で“一番満足している所”を自由回答形式で聞いたところ、「業務で扱う技術の先進性、専門性」「業務に集中できる環境」「仕事の規模が大きい」「ワ-クライフバランスがとり易い」「給料、福利厚生がいい」などの意見があった。
逆に“一番不満を持っていること”については、「経営層への不信」「スピ-ドが遅い」「組織の巨大化に伴う弊害」「仕事内容への不満」があがった。

一方、中小企業で働くエンジニアの“一番満足している所”では「業務で扱う技術の先進性、専門性」「業務に集中できる環境」など大企業と同じ意見の他に「顧客からのフィ-ドバックが得られる」「人間関係が温和」といった意見が見られた。
また、“一番不満を持っていること”は「業務負担が大きい」「人事評価に不満」「若手が育たない」などがあがった。

以上

国交省と厚労省が建設業対策で連携強化――計110億円規模の人材確保事業

国土交通省と厚生労働省は平成29年度、建設業における人材の確保・育成と魅力ある職場づくりを後押しするため、連携・共同して予算要求し対策を推進する方針である。技能労働者の高齢化が急速に進行しているなか、建設業が持続的成長を果たしていくには、関係省庁が一体となって中長期的対策を打ち出す必要があるとしている。連携して予算要求しているのは、雇用管理制度の整備に向けたコンサルティング支援や社会保険加入促進事業および各種助成金の拡充など、合計14事業、予算規模110億円を上回る。

 

東大水町教授・「みなさんの問題」と訴え――連合東京「同一労働・賃金集会」で

「みなさんの問題なんです」――連合東京が11月14日に都内で開いた同一労働同一賃金に関するセミナーで、講師に招かれた東京大学社会科学研究所の水町勇一郎教授が、集まった組合員らに、使用者も念頭に置いてこう訴えた。関連3法の一括改正などをめざす政府の妥当性を述べつつ、正規・非正規の格差や長時間労働の問題は法改正に関与してきた労使の取組みの結果であるという厳しい見方を突き付けた。坊主(アベノミクス)憎けりゃ袈裟(働き方改革)まで憎いでは、現場の実態は変わらないと熟考を求めた。

複線化し専門人材も役職に――㈱ユーグレナが新人事制度

㈱ユーグレナ(東京都港区、出雲充社長)は、役割等級の上位階層をマネジメント系列とスペシャリスト系列に複線化した新人事制度を導入した。ライン長以外の役職として新たにテクニカルディレクターを設け、高度専門職人材を部課長並みに処遇する。個人のキャリア志向とライフプランに応じた働き方を実現できる仕組みをめざしたもので、柔軟な勤務制度も採り入れた。始・終業時刻を2時間まで繰り上げられるモーニングシフト制を導入したほか、退職理由によっては3年以内の復職を認める制度を新設し、博士号やМBA取得への挑戦を可能としている。