2020年6月9日
シリ-ズで掲載しています、リクル-トワ-クス研究所と国内大学所属の研究員有志のグル-プが2020年4月に行った調査(有効回答4363)から分析した主な発見事実の最終回です。
[4] 就労者の心理・行動を規定する要因
就労者の心理(感染リスク、一貫性感覚、不安、職務ストレス、孤立感)及び行動 (学習棄却、両利き性、関係構築)を規定する要因は様々であり、また中身によって微妙なバリエ-ションが存在する。
ただし、以下の諸要因は、就労者の心理・行動の多様な側面に対して影響を与える。就労者に対してポジティブな影響を与えるものには+、ネガティブな影響を与えるものには-を、どちらの影響も与えるものには+/-を記している。
(1) 本人要因 : 神経症傾向(-)、自己信頼(+/-)、エビデンス重視(+/-)、
現実重視(+/-)、年齢(+/-)、オンラインツ-ルリテラシ-(+/-)、
生活物資・感染予防物資の確保(+/-)
(2) 職場要因 : リモートワ-クの実施(+)、上司支援(+)、相互支援(+)、
公正な扱い(+/-)、心理的安全(+)
(3) 企業要因 : 新型コロナ対応の充実(+)
「+/-」が多いことから明らかなように、ある要因の効果が正負半ばする事が多い。
また、新型コロナウイルス流行によって生じた変化が就労者の心理・行動に及ぼす影響は限定的で、それ以前からの生活環境・職場環境の影響の方が大きい。心理的なネガティブ状態が、創造的な行動を引き出すという逆説(パラドクス) も観察された。
※発見事実がもたらす示唆
新型コロナウイルス感染症の広がりは、日本の就労者に少なからぬ影響を与えている。それはまた、不安の増大に代表されるように人々の心理面にも影を落としている。
希望があるとすれば、こうした事態が日本の就労者の幸福を奪うには至っていないということ、加えて、少なからぬ個人が新型コロナウイルスを取り巻く状況に対し、能動的に向き合っていることが本調査の発見事実から示唆されている。
同時に、新型コロナウイルスの流行により影響を大きく受けている人、こうした影響を吸収するバッファ-を多く持ち合わせている人がいることも示された。
ここでの発見事実は、こうした個人を特定し、支援の手を差し伸べることを可能にするといえよう。
以上