「新型コロナウイルス感染症の流行への対応が就労者の心理・行動に与える影響-2」

前回に続き、リクル-トワ-クス研究所と国内大学所属の研究員有志のグル-プが 2020年4月に行った調査(有効回答4363)から分析した主な発見事実の第2弾です。

[3] 就労者の心理・行動

①就労者の心理(一次的反応)
仕事中の緊張感/ストレスが高まっているという人が増えている。自身および家族の感染リスクについても、半数以上の回答者がある程度高く見積もっていた。
6割以上の回答者が自分自身やその状況について、「意味がある」「自分自身を統制できている」「落ち着いている」と感じることができていない状態にある。 このような心理状態は不安感にも表れており、新型コロナウイルスの感染拡大に関してある程度の不安を抱えながら働いている。
その対象についてみると、対家族の不安よりも、対自己、対社会に対する不安の方が強い。ただ、幸福感については多くの人が幸福と回答しており、一貫性のなさや不安が就労者の幸福感まで奪う事態にはなっていない。
職場の人間関係については、同僚や上司との非公式なコミュニケ-ション、職場の束縛感や一体感が低下したと感じている人の方が高まったと感じている人よりも多い。それに伴い、およそ25%の人が孤立感を感じている。

②就労者の行動(二次的反応)
コロナ禍を機に、仕事上のこれまでのやり方や価値観、信念を振り返り、場合によ っては捨てる(学習棄却)ことができている人は少ない。全体のおよそ75%がこれまでのやり方や価値観、信念に則って仕事を行っている。
両利き性については、探索と深化のバランスで見ると、これまで取り組んでこなかったことや手法に挑戦する探索よりも、既存の知識や能力を研鑽し、掘り下げる深化の方に力点が置かれている。
職場の同僚との関係構築については、業務情報の提供や獲得に変化を感じている人は少ないが、家族やプライベ-トの問題を気軽に相談し合うというような行動の減少を感じている人は多い。

以上

新型コロナ 感染リスク不安へ対処――厚労省

厚生労働省は5月7日、新型コロナウイルス感染拡大を受け、妊娠中の女性労働者に対する母性健康管理措置義務を強化する指針改正を実施した。業務や通勤により新型コロナに感染するかもしれないストレスが、母体・胎児に影響があると医師から指導を受け、労働者がその旨を申し出た場合、事業主は感染リスクの低い作業への転換や在宅勤務、休業などの措置を講じなければならない。義務違反の事業主は都道府県労働局による助言指導、企業名公表の対象となる。義務が課されるのは令和2年5月7日~3年1月末までだが、感染状況によっては延長もあり得るとしている。

雇用調整助成金 迅速支給へ「前払い」を――日商

日本商工会議所(三村明夫会頭)は、雇用調整助成金の円滑な申請・支給に関する緊急要望を取りまとめ、政府に提出した。新型コロナウイルス感染症の影響が広がるなか、迅速な支給に向けて、休業手当の支払い前に見込み額を支給する「前払い」の導入を求めている。売上高などが一定以上低下していることを前提とする「生産指標要件」の撤廃や、事前の労使協定締結および関連書類の添付の撤廃・削減も訴えた。

身体・精神的攻撃を追加――厚労省

厚生労働省は、職場におけるパワーハラスメントに基づくストレス障害を労災認定するための判断基準(案)を明らかにした。「心理的負荷評価表」の具体的出来事に「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」を追加設定し、独立項目として判断する。医学的知見による平均的な心理的負荷の強度は、三段階で最高の強度「Ⅲ」とし、上司から暴行を受けたり、人格を否定するような執拗な精神的攻撃を受けた場合などは、心理的負荷を「強」と位置付け、労災認定するとした。

歩合給 残業代控除する仕組みは無効――最高裁

タクシー運転者の歩合給について、残業代を控除し算定する仕組みの有効性が争われた裁判で、最高裁判所第一小法廷(深山卓也裁判長)は、控除を違法とする判決を下した。国際自動車㈱で働く労働者らが残業をしても賃金が増えない賃金規程を不服としたもので、最高裁は平成29年に規程は「直ちに無効といえない」として差し戻し、高裁は規程を有効としていた。2度目の上告審で最高裁は、通常の労働時間の賃金と残業代の判別ができず、残業代は支払われていないと指摘。残業代計算のため、再度高裁に差し戻した。

同一賃金 大企業に是正指導実施――東京労働局・令和2年度方針

東京労働局(土田浩史局長)は、令和2年度の行政運営方針を決定した。今年4月から順次施行されている「同一労働同一賃金」や、今年6月施行のパワーハラスメント防止に向けた事業主の雇用措置義務など、法改正事項の履行確保に重点的に取り組む。パート・有期労働者の公正な待遇確保の面では、大企業に対して報告徴収などを通じた是正指導を行い、中小企業には、来年4月の施行に向けて早期の対応を呼びかけていく。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う労働相談にも迅速・円滑に対応するとした。

補正予算 厚年保険料や税を納付猶予――政府

政府は、令和2年度補正予算の成立後、新型コロナウイルス感染症で影響を受けた事業者に対する大規模な救済対策を実施する。専門家による経営相談、資金繰り支援、設備投資・販路開拓支援のほか、国税・地方税・厚生年金保険料および電気・ガス料金などの納付猶予を認める。厚生年金保険料は、年金事務所へ申請すれば、猶予期間中の延滞金を一部免除する。納税猶予は、2月以降に売上げが前年同月比20%以上減少したすべての事業者に適用する。

「新型コロナウイルス感染症の流行への対応が就労者の心理・行動に与える影響-1」

リクル-トワ-クス研究所と国内大学所属の研究員有志のグル-プが
2020年4月に行った調査(有効回答4363)から分析した主な発見事実

[1] 就労者を取り巻く仕事・生活環境の変化

①生活時間、自己啓発・余暇活動、所得の変化
生活時間は通勤時間を含めて就業時間が1時間23分減少。その分が余暇と家事・育児に回っている。ただし、この状況について必ずしも多くの人が不満を持つわけではなく、特に家事・育児については時間が増えたことに満足している人が多い。
自己啓発、余暇活動については回答者の3割弱が何らかの形で活動の幅を減少。一方で、1割強の人がこれを機に新たな活動を開始している。
所得については回答者の半数弱が今年の所得が減少すると考えており、半数強が世帯所得が減少すると考えている。

②リモ-トワ-クの実施
リモ-トワ-クを行っている人は回答者全体の25%に留まっている。
業種、職種によって実施割合に差があり、リモ-トワ-クを選択できる環境下にある人については感染リスクを低下させる環境を与えられているが、それが許されない環境下にある人については、依然としてリスクを抱えたままでいるというように乖離が生じている。
総じて緊急事態宣言が発令された都道府県に立地する企業、または大企業においての実施率が高い。

[2]就労者と企業による新型コロナウイルス感染症への対応

①就労者による対応回答者がとっているリスク管理行動は、あらゆる項目で増加。ただし、その変化量には項目ごとにかなり差がある。
自身でコントロ-ルできる行動については実施割合が上がっているものの、できない行動については実施度合いにあまり変化はない。
物資の確保に関しては、生活物資・感染防止物資の双方において回答者はそれ程深刻な不足を経験していない。ただし、感染予防物資の方がやや不足気味であった。
また、自身が収集している新型コロナウイルス関連の情報に対して、就労者は高い信頼を寄せているわけではないが、それを自分なりに理解し、活用している姿が見られた。

②企業による対応
言葉や情報から実質的な資源投下まで多様な対策が取られている企業がある一方で、対策を殆ど取ってない企業もあり、企業間での対応が二極化している。

以上

中小規模の課長級44万円――厚労省 役職・職種・標準者賃金

賃金構造基本統計調査の役職者賃金によると、課長級の所定内給与額は1000人以上の大手規模では59.0万円、500~999人規模の中堅規模で49.6万円、100~499人の中小規模で44.2万円だった。大手に比べて中小は14.8万円低い。部長級では同じ順に74.2万円、66.0万円、57.8万円となり、係長級は43.3万円、37.5万円、34.9万円となっている。標準労働者の年齢階級別賃金は、男女ともに大卒の45~59歳の階級で前年を下回った。一方、非役職者の職種別集計をみると、男性ではシステム・エンジニアが35.4万円、営業用大型貨物自動車運転者が28.8万円、女性では看護師が30.2万円、販売店員が20.0万円、福祉施設介護員が22.2万円などとなっている。

最賃引上げ凍結も視野に――日商など3団体が要望

最低賃金の引上げ凍結も視野に水準決定を日本商工会議所、全国中小企業団体中央会、全国商工会連合会の商工3団体は連名で、最低賃金に関する要望を取りまとめ、厚生労働省や内閣府などに提出した。今年度の最賃審議について、新型コロナウイルスの影響による危機的な経済情勢を反映した新たな政府方針の設定と、引上げ凍結も視野に入れた水準決定を求めている。賃金水準の引上げを図るには、生産性向上の支援などを通じて中小企業が自発的に賃上げできる環境を整備すべきと訴えた。

休息時間は導入後に変更を――厚労省

厚生労働省は、改正労働時間等設定改善法で努力義務化した「勤務間インターバル制度」の導入・運用マニュアルを作成した。インターバル時間の設定は、導入時において最低限「9時間」などと定め、運用状況に応じて順次長時間化する方法を勧めている。インターバル時間が確保できない事態に対応して、「適用除外」となる業務などを事前に定めておくのも有効である。本格導入の前に試行的運用を行うのがポイントとした。厚労省では、導入企業割合10%以上をめざしている。